「会社の魅力はちゃんと説明しているはずなのに、応募が来ない」
「待遇や福利厚生も悪くない。職場の雰囲気だっていいはず」
そんなふうに感じている中小企業の採用担当者の方は、少なくないのではないでしょうか。
ですが、その“伝えているつもり”の情報、本当に求職者に届いているでしょうか?
実は、多くの採用情報が、企業目線のまま「良さ」を押し付けてしまっていることが多いのです。
「わが社は創業◯年の安定企業です」
「成長中の業界で、やりがいがあります」
「風通しのいい職場で、若手も活躍しています」
──たしかに悪くない言葉です。でも、それは企業が伝えたいことであって、求職者が知りたいこととは限りません。
とくに新卒や若手世代が就職活動で求めているのは、「この会社に入ったら、自分の人生がどう豊かになるか」「どんな日々を送ることになるのか」という、“働く”を超えた生活・価値観レベルの想像です。
本記事では、そうした求職者目線に立ったときに、どんな情報・言葉・姿勢が響くのかを、採用ページや求人文にありがちな表現を例に挙げながら、具体的にお伝えしていきます。
「魅力はあるのに、伝わっていない」──
そんな状況を変えるヒントが、きっと見つかるはずです。
求職者が本当に知りたいのは「条件」ではなく「納得」
求人情報を見るとき、もちろん給与や休日、福利厚生は誰もが気にするポイントです。
でも実際のところ、求職者──とくに新卒や若手層──が本当に知りたいのは、「この会社で働くことで自分の未来がどう変わるのか」という納得感です。
「やりがいのある仕事です」だけでは足りません。
求職者は、“この仕事にどんな意味があるのか”、“この会社にいることでどんな価値を感じられるのか”を探しています。
「間違いたくない」からこそ、“意味のある選択”をしたい
特に近年の若手世代は、「早く辞める=悪いこと」と思っていません。
でもその分、「入社するからには自分にとって意味のある選択にしたい」という意識は強くなっています。
「ちゃんとやっていけるかな」「この会社の人たちとうまくやっていけるだろうか」
そんな漠然とした不安に対して、“ここなら大丈夫かも”と思える納得材料を用意することが、採用情報には求められているのです。
条件で勝負できない中小企業こそ、“納得”を届ける採用を
大手企業のように知名度や高待遇で惹きつけることが難しい中小企業にとって、「人生と仕事をどう結びつけてあげられるか」は、大きな差別化ポイントです。
だからこそ、単なる数字や制度だけでなく、日々の仕事に感じられる価値、仲間との関係、仕事を通じた成長や安心といった、“人生を預けるに足るリアリティ”を伝えていく必要があります。
3.「この会社、なんか好きかも」と思ってもらえる伝え方
「この会社、なんか好きかも」
採用において本当に強いのは、条件や制度を羅列した求人ではなく、こうした感情的な好意を引き出せる採用情報です。
そのためには、「誰に向けて、どんな気持ちで伝えているか」が、言葉の選び方や情報の見せ方ににじみ出ている必要があります。
ここでは、“共感される採用情報”に共通する3つのポイントをご紹介します。
1. 主語が“自社”ではなく“あなた”になっているか
「私たちは◯◯を大切にしています」「社員同士の仲が良いです」
こうした表現も間違いではありませんが、すべて企業の内側からの語りです。
代わりに、「あなたがここで働くと、◯◯を感じられるはず」「あなたにとっての成長や安心がここにある」──
そんなふうに、求職者の未来を想像しながら語る視点を持つだけで、言葉の印象はがらりと変わります。
2. “日常の空気”が想像できる情報を
職場の雰囲気を伝えるには、「風通しの良い社風」よりも、昼休みにスタッフが談笑している風景や、入社1年目の社員が先輩に相談している様子のほうが、ずっと伝わります。
求職者が気になるのは、「入ったらどうなるか?」という日々のリアル。
“会社紹介”ではなく“日常の共有”が、共感の鍵です。
3. “働く理由”を、人生の言葉で語る
「やりがいがあります」よりも、「目の前のお客さんに『ありがとう』と言われると、やっぱり嬉しい」
「社会貢献しています」よりも、「子どもが『お父さんすごいね』と言ってくれる仕事です」
──こうした言葉のほうが、ずっと心に残りませんか?
企業理念やビジョンも、人の言葉として届けることで“等身大の魅力”になります。
「この会社の人たちって、なんかいいな」
そんな空気を感じてもらえるかどうかが、選ばれる採用につながっていきます。
“押し売り”から“共感”へ。伝え方を変える3つの姿勢
情報があふれる今、求職者は“読む側”としての感度が高くなっています。
どんなに内容が正しくても、企業の言葉が一方的だったり、上から目線に見えたりすれば、すぐに「なんか違う」と離れていってしまいます。
ここでは、採用情報の“伝え方”を見直すために意識したい、3つの基本姿勢を紹介します。
1. 「伝える」ではなく「寄り添う」
企業がよく使う「想いを伝える」という言葉。もちろん大切な姿勢ですが、“自分たちの想い”だけに終始していないか、振り返ってみる必要があります。
たとえば、「あなたの不安をちゃんと受け止めたい」「あなたの成長を一緒に考えたい」
そんな“求職者の立場に立ったメッセージ”は、説明以上に共感を生みます。
2. 「強み」ではなく「相手の不安への答え」
「うちの会社の強みは〇〇です」ではなく、
「最初の配属に不安を感じる人も多いので、面談で一緒に相談しながら決めています」
──こんなふうに、“相手の不安”を起点にした情報のほうが、ぐっと信頼感が増します。
求職者は「自分のことを考えてくれている会社か」を見ています。
その視点を持つだけで、同じ事実でも伝わり方はまったく変わってくるのです。
3. 「採用する」ではなく「一緒に未来をつくる」
採用は、企業が人を選ぶ行為ではありません。
求職者と企業がお互いを理解し、未来を一緒に描いていく入り口です。
「あなたを求めています」よりも、「あなたと一緒に、会社のこれからをつくりたい」
そんな姿勢のほうが、求職者の心には届きます。
言葉の背景にある“人としての関わり方”が、採用情報の空気感を左右しているのです。
まとめ:「伝わる採用」は、企業の姿勢から始まる
採用活動で一番大切なのは、「どう伝えるか」ではなく、「どんな姿勢で向き合うか」です。
どれだけ制度や待遇を整えていても、それが求職者の心に響く言葉で伝えられていなければ、届くことはありません。
多くの中小企業が、採用情報の中で“自社の魅力”を語ろうとします。
でも、そこで一度立ち止まって、「これは相手にとってどんな価値になるのか?」と問い直すだけで、採用広報の言葉は大きく変わります。
共感される言葉とは、誠実さと想像力のある言葉。
押し売りのような「私たちはこうです」ではなく、「あなたの未来に、私たちはどう関われるか」という視点で伝えることが、信頼を生みます。
アトラボでは、そうした“伝え方の根っこ”に寄り添う採用サイトづくりやコピーライティングもご支援しています。
「求職者に届く言葉って何だろう?」と感じたら、ぜひ一緒に考えてみませんか。


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