
少子高齢化や若手人材の都市部集中などを背景に、中小企業の採用難はますます深刻化しています。
そんな中で注目されているのが、企業独自の採用情報をまとめた「採用サイト」。求職者との接点を増やし、自社の魅力を直接伝える手段として、多くの企業が制作を検討するようになりました。
それに伴い、最近では「採用サイト専門」を名乗るWeb制作会社も増えてきました。
「採用特化のノウハウがあります」「成功事例が豊富です」といった謳い文句で営業を受けたことのある人事・広報担当の方も多いのではないでしょうか。
もちろん、採用領域に特化した知見を持ち、実績を積み重ねている会社も多数存在します。しかし一方で、“採用専門”という看板を掲げながらも、実態はテンプレートに情報を埋め込むだけの「量産型サイト」だった…というケースも少なくありません。
本記事では、なぜ「採用サイト専門」とうたう制作会社が、必ずしもベストな選択肢ではないのか、そして失敗しない制作会社の選び方について、これまで中小企業の採用支援に数多く携わってきた視点から解説していきます。
「採用サイト専門」を謳う制作会社のよくある特徴
「採用サイト専門」を掲げる制作会社の多くは、都内に本社を構え、地方の中小企業をターゲットに全国規模で営業展開を行っています。最近では、Zoom商談やクラウドツールの普及によって、物理的な距離を感じさせない営業活動が可能になったため、都市部から地方への進出はさらに加速しています。
もちろん、その中にはノウハウ豊富で実績のある優良企業もありますが、すべてがそうとは限りません。以下のような特徴が見られる制作会社には注意が必要です。
1. 決まったテンプレートに情報を流し込むだけの構成
実際に制作された採用サイトを見てみると、業種や地域に関係なく、似たような構成・デザインになっているケースがよくあります。トップに社員写真、ミッション・ビジョン、職種紹介、社員インタビュー…。一見きれいですが、「他社と同じ構成」で「自社らしさ」が感じられないため、求職者の記憶に残らず、差別化ができていないのが実情です。
2. カスタマイズが効かない制作プラン
「専門」だからこそ、より柔軟に対応してくれるかと思いきや、意外と細かいカスタマイズに対応できないという声もよく聞きます。「うちの会社はこういう働き方もある」「このエリアの求職者にはこういう伝え方をしたい」といった要望があっても、テンプレートから外れると対応不可、もしくは追加料金になるパターンも多く見られます。
3. ディレクションやライティングが弱く、情報の引き出しが不十分
採用サイトでは、ただ情報を並べるだけでなく、「求職者が知りたいことを、わかりやすく、魅力的に伝える力」が不可欠です。しかし、中にはヒアリングが浅かったり、文章の表現が抽象的だったりと、ライティングの精度が低いケースも少なくありません。結果として、「それっぽいけど中身のないページ」になってしまいがちです。
4. 成果が出ないと広告出稿を追加提案される
制作完了後、思うように応募が集まらないと、「ポータルサイトに広告を出しましょう」「SNS広告を回しましょう」と、追加で広告出稿を勧められるケースもあります。もちろん広告は有効な手段ですが、もともとの設計や導線が甘いままでは、広告効果も限定的です。本質的な改善がなされないまま、コストだけがかかっていくのは避けたいところです。
「採用サイト」だけを切り出して制作することのリスク
「採用強化のために、とりあえず採用サイトを作ろう」という流れで、コーポレートサイトとは完全に切り離した採用サイトを別ドメイン・別設計で作る企業が少なくありません。
一見すると「採用に特化した設計」でメリットがありそうですが、実はここに大きな落とし穴が潜んでいます。
1. 採用情報と企業全体の情報が分断されてしまう
求職者は採用サイトだけでなく、企業全体の事業内容・沿革・代表メッセージ・実績など、多面的な情報を見て「この会社は信頼できるか?」を判断しています。
採用サイトだけが独立していて、肝心の企業情報が見えにくくなってしまっていると、情報の信頼性が薄れ、応募に至らない可能性も高まります。
2. 運用・更新コストがかさむ
採用サイトを別ドメインで設計した場合、CMS(WordPressなど)も別途必要になり、情報更新の手間や運用管理の負担が増加します。たとえば「社員紹介ページを更新したい」「募集要項を変えたい」といった際にも、社内でのフローが複雑になることがあります。
結果として「放置されたままの採用サイト」になり、求職者に古い印象・不信感を与えるリスクも。
3. コンバージョン導線が分断される
ホームページやブログ、SNSなどからの流入があっても、採用サイトが別構造になっていると、スムーズに遷移できずに離脱されることがあります。
また、Googleなどの検索エンジンから見ても、「企業全体のWeb戦略としての一貫性がない」と判断され、SEO評価も分散してしまう点も要注意です。
4. デザイン・トーンの統一感がなくなる
コーポレートサイトと採用サイトがバラバラに作られていると、「雰囲気の違う会社」に見えてしまうことがあります。
特にビジュアル面で、色やフォント、写真のトーンが大きく異なると、求職者に「企業イメージが不安定」という印象を与えかねません。
採用活動は企業の信頼構築と直結しており、「ブランドの一部」として採用情報を発信することが重要です。採用サイトだけを切り出すというのは、一見効率的に見えて、実は企業全体の信頼性や運用効率を損なうリスクをはらんでいます。
制作会社の「実績」は、採用以外もチェックすべき理由
「採用専門」を謳う制作会社の多くは、採用サイトの実績を数多く紹介しています。確かに、求人数の増加とともに「採用ページだけを請け負う」案件は急増しており、採用特化の構成やビジュアルに慣れたノウハウを持っている会社も存在します。
しかし、だからといって「採用サイトの実績だけ」で発注先を決めるのは危険です。特に中小企業の採用活動では、「応募獲得」だけでなく「会社全体の信頼づくり」「企業ブランディング」も同時に担う必要があります。そのためには、採用以外のWeb制作経験が豊富かどうかを見極めることが大切です。
1. 「採用情報」だけでは求職者は応募を決めない
採用情報の他に、事業内容・実績・顧客の声・代表メッセージ・社風など、コーポレートサイトにある情報もあわせてチェックされます。採用サイト単体では伝えきれない情報が多く、その構成力・設計力を持っているかどうかが、実は成果を左右するポイントです。
2. 採用サイトは「企業の顔の一部」
採用ページとコーポレートサイトのデザインや文体、世界観がバラバラだと、企業の一貫性や信頼性に疑問を持たれてしまいます。そのため、採用サイトであっても、全体のブランド設計に関われる力があるかが重要です。ECサイト、企業LP、キャンペーンサイト、BtoBサイトなど、幅広いWebサイトの実績があるかどうかは、その力を見極める指標になります。
3. 採用マーケティングは、Web全体の戦略があってこそ
求職者はSNSや検索、口コミサイト、取引先のサイトなど、あらゆるチャネルを経由して企業にたどり着く時代です。採用サイト単体ではなく、Web全体での導線設計・集客戦略まで支援できるかは、制作会社選びにおいて非常に重要です。
「採用実績が多い=採用サイトに強い」と思いがちですが、それはあくまで一面の実力にすぎません。本当に信頼できる制作会社かどうかを見極めるには、コーポレートサイトやプロモーションサイト、ECなど他分野の制作実績を確認し、「多様なニーズに対応できる柔軟性」をチェックしましょう。
“専門性”ではなく“設計力・提案力”で選ぼう
「採用専門」を謳う制作会社は、確かに採用市場のトレンドや媒体活用の知識に明るく、特定の業界や職種に強いパターンもあります。ですが、中小企業の採用サイトにおいて本当に求められるのは、“専門性”よりも“設計力・提案力”です。
1. 採用サイト=企業の「今」と「これから」を語る場
採用活動は単なる人材募集ではなく、企業の未来を形づくるための戦略的活動です。よって、事業戦略、働き方、社風、今後の展望などをどう伝えるかを整理する力=設計力が問われます。ただページを並べるだけでは、求職者の共感や納得は得られません。
2. 定型テンプレでは伝わらない、「その企業らしさ」
「どこかで見たことがあるような構成」や「テンプレートに当てはめたキャッチコピー」では、他社との差別化はできません。だからこそ、企業の強みや想いを読み取り、言語化・ビジュアル化できる提案力があるかが重要です。採用のノウハウだけでなく、経営視点・広報視点を持ったパートナーを選ぶ必要があります。
3. 採用担当者の悩みや状況に寄り添えるか
多くの中小企業では、採用担当者が他の業務と兼任で動いており、「時間も手間もない中で、いい人を採りたい」というジレンマを抱えています。だからこそ、質問設計・写真撮影・インタビュー・運用方法までを一括で支援できる制作会社が力を発揮します。部分的な専門性ではなく、全体を見通し、状況に応じて柔軟に提案できる設計力・伴走力が求められるのです。
採用サイトづくりは「型」ではなく「対話」から始まります。単なる実績数や専門性の高さに惑わされず、その会社が自社にどれだけ深く向き合ってくれるかを軸に選びましょう。
アトラボでは、採用サイトも「全体の流れ」の中でご提案します
アトラボでは、採用サイトを単体で考えることはありません。私たちが重視しているのは、「コーポレートサイト」や「事業紹介ページ」「採用ポータル」など全体の導線設計の中に、採用ページがどう機能するかという視点です。
例えば、企業のトップページから採用ページへ自然に誘導するには、企業全体のブランドイメージやメッセージの一貫性が欠かせません。また、商品やサービスページと人材募集ページが切り離されているようでは、求職者に「本当にこの会社で働きたい」と思ってもらうことは難しいのです。
採用サイトは「企業の魅力を語る最後のピース」
私たちは、採用サイトを単なる「情報発信の箱」ではなく、企業の魅力を立体的に伝えるための“最後のピース”だと考えています。どんな仕事があり、どんな人が働いていて、どんな未来が描けるのか――その全体像を、ストーリーとして伝える設計を行います。
企画・設計・取材・撮影・ライティングまで、ワンストップで
求職者に響く採用サイトをつくるには、丁寧なヒアリングと、社員一人ひとりに寄り添ったコンテンツ設計が欠かせません。アトラボでは、事前の企画設計から、社員インタビュー、撮影、ライティング、公開後の運用アドバイスまで、一貫してサポートしています。
採用に悩む中小企業にとって、「本当に伝えるべきことを、誠実に、魅力的に伝える」ことこそが最大の戦略です。アトラボは、御社の採用活動を、企業全体のブランディングや課題解決の流れの中で、共に考え、支援してまいります。

まとめ
「採用サイト専門」を謳う制作会社が増えるなかで、どの制作会社に依頼すべきか迷う人事担当者や経営者の方は少なくありません。確かに、採用領域に特化したノウハウは心強いかもしれません。しかし、テンプレート的な構成や情報の“当てはめ”だけでは、御社ならではの魅力を伝えることは難しく、結果として求職者の心に届かない採用サイトになってしまうリスクもあります。
大切なのは、「採用」だけを切り出すのではなく、コーポレート全体のブランディングや情報設計と連動した戦略的な採用サイトをつくること。そのためには、実績の豊富さや専門性だけでなく、設計力・提案力・コンテンツの品質といった点を重視する必要があります。
アトラボでは、採用サイトの制作を「求人票の代替」ではなく、“信頼と共感を築くための経営ツール”として位置づけ、企業の魅力をしっかりと言語化し、丁寧に伝えることにこだわっています。もし、採用サイトのリニューアルや新設をご検討中であれば、まずはお気軽にご相談ください。




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