
生成AIの進化によって、バナーやSNS画像、Webサイトのビジュアルなどを、短時間で高いクオリティに仕上げられるようになりました。専門的なデザインソフトを使わなくても、それらしい制作物を作れる場面は確実に増えています。
その一方で、少し気をつけたいのが「デザインの統一感」です。1枚ずつ見ると完成度が高くても、Webサイト、SNS、広告、チラシ、店舗ツールなどを並べたときに、どこかバラバラに見えてしまうケースがあります。
生成AIでデザインの品質が上がるほど、「一つひとつがきれいか」ではなく、「ブランド全体として統一されているか」が重要になります。
今回は、生成AIを活用しながらもブランドイメージを崩さないために、中小企業が意識しておきたいデザイン統一の考え方を簡潔にご紹介します。
生成AIは「最後の指示」に引っ張られやすい
生成AIでデザインを作る際には、最初にブランドカラーやフォント、写真の雰囲気、全体のトーンなどを細かく指定することがあります。しかし、制作を進めるうちに「もっと高級感を出して」「若い人向けに」「今回は目立たせたい」といった個別の指示が増えていくと、最初に決めたルールよりも、直近の指示が強く反映されることがあります。
その結果、一つの制作物として見れば完成度が高くても、以前に作ったバナーやWebサイト、印刷物と並べたときに、少しずつ雰囲気がズレていくことがあります。
問題なのは、AIがデザインできないことではなく、「今回の目的」を優先するあまり、ブランド全体の基本ルールを見失いやすいことです。
これは人が制作する場合でも同じですが、生成AIは短時間で多くの案を作れる分、気づかないうちに方向性が広がりやすいという特徴があります。
だからこそ、生成AIに任せる場合も、「今回どう見せたいか」だけでなく、「この会社として絶対に変えない部分は何か」を毎回意識することが大切です。
単体では良くても、並べると違和感が出る
生成AIで作ったデザインは、一つひとつを見ると十分にきれいで、完成度も高く感じられることがあります。ところが、それらをWebサイトやSNS、広告、チラシなどで並べてみると、「同じ会社の制作物に見えない」という違和感が出ることがあります。
例えば、Webサイトでは落ち着いた雰囲気なのに、SNSでは急にポップになる。店舗ごとにキャンペーン画像のテイストが違う。チラシだけ妙に高級感が強い。このような小さなズレが積み重なると、ブランド全体の印象がぼやけてしまいます。
デザインは、1点ずつ評価するものではなく、ユーザーが触れるすべての接点を通して評価されます。
特に複数店舗を運営していたり、Web担当・広報担当・店舗スタッフなど複数人が制作に関わったりする企業では、生成AIの活用によってデザインのバリエーションが増えやすくなります。
だからこそ、新しく作ったデザインだけを見るのではなく、既存のWebサイトや印刷物、SNS投稿と並べて確認することが大切です。
「この1枚は良いか」ではなく、「この会社らしく見えるか」という視点で確認することが、ブランドの統一感を守るポイントになります。
「トンマナ」を決めるだけでは足りない
デザインの統一感を保つために、「トンマナ」を決めておくことはとても大切です。トンマナとは「トーン&マナー」の略で、ブランド全体の雰囲気や表現ルールをそろえる考え方です。
ただし、「ブランドカラーはこの色」「フォントはこれ」「ロゴはこの位置」と決めるだけでは、生成AIを活用するうえでは十分とは言えません。
デザインの統一感は、配色やフォントだけではなく、「どんな見せ方をするブランドなのか」まで共有して初めて保たれます。
例えば、写真は明るく自然な雰囲気にするのか、コントラストを強めて印象的に見せるのか。人物は笑顔を中心にするのか、落ち着いた表情を使うのか。イラストのタッチや余白の取り方、見出しの強さ、アイコンの形、文章の言葉遣いなどもブランドの印象を大きく左右します。
生成AIにデザインを依頼する場合も、こうした要素まである程度ルール化しておくことで、毎回の指示によるブレを抑えやすくなります。
大企業のような分厚いブランドガイドラインを作る必要はありません。中小企業であれば、使用する色、フォント、写真の雰囲気、言葉遣い、避けたい表現などを簡潔にまとめておくだけでも十分に効果があります。
生成AIを使う時代だからこそ、「何を使うか」だけでなく、「どう見せるか」の共通ルールまで持っておくことが大切です。
AIに任せる部分と、人が判断する部分を分ける
生成AIは、アイデアを出したり、複数のデザイン案を短時間で作ったり、用途に合わせてサイズや構成を変えたりすることが得意です。これまで時間がかかっていた制作作業を効率化できる点は、大きなメリットです。
一方で、「このデザインは自社らしいか」「既存のWebサイトや印刷物と並べても違和感がないか」といった判断まで、すべてAIに任せるのはまだ難しい場面があります。
AIに必要なのは「上手に作ってもらう指示」だけではなく、「どこまで変えてよいか」というルールです。
例えば、構図やコピーのアイデア出しはAIに任せる一方で、ブランドカラー、写真の雰囲気、ロゴの扱い、言葉遣いなどは人が基準を決める。こうして役割を分けることで、AIのスピードを活かしながら統一感を守りやすくなります。
また、生成されたデザインは単体で確認するのではなく、既存のWebサイトやSNS、チラシなどと並べて見ることも大切です。
「良いデザインか」だけではなく、「この会社のデザインとして正しいか」を判断することは、これからますます人に求められる役割になっていくでしょう。
これから必要になるのは「デザインする力」より「デザインを見る力」かもしれない
生成AIの進化によって、専門的なデザインスキルがなくても、一定水準のバナーや画像、レイアウトを作れる時代になってきました。これまで一部の人に限られていた「作る力」は、これからさらに多くの人へ広がっていくでしょう。
その一方で、重要になるのが「このデザインは本当に自社に合っているか」「他の制作物と並べたときに違和感がないか」を見極める力です。
AI時代には、「作れること」そのものよりも、「良し悪しを判断できること」の価値が高まっていくかもしれません。
これは、デザイナーだけの話ではありません。経営者や広報担当、Web担当、店舗スタッフなど、日常的にAIを使って制作する人すべてに、最低限のデザインリテラシーが求められるようになっていく可能性があります。
もちろん将来的には、生成AIだけでWebサイト、広告、SNS、印刷物まで高い統一感を保ちながら制作できるブランドも増えていくでしょう。しかし、その場合でも「何を自社らしいとするのか」という基準そのものは、人が考える必要があります。
生成AIがデザインを民主化するほど、人には「作る技術」より「選ぶ力」「揃える力」「判断する力」が求められていくのです。
アトラボの考え方|AIを使うほど「基準」を先に作る
アトラボでは、生成AIをデザイン制作に取り入れること自体は、これからますます当たり前になっていくと考えています。重要なのは「AIを使うか、使わないか」ではなく、どのような基準のもとで使うかです。
AIを活用するほど、最初に「この会社らしさとは何か」を決めておくことが重要になります。
ブランドカラーやフォントだけでなく、写真の雰囲気、余白の取り方、言葉遣い、見出しの強さ、避けたい表現などをある程度整理しておけば、担当者や制作物が変わっても判断しやすくなります。
特に中小企業では、Webサイトは制作会社、SNSは社内担当者、チラシは別の印刷会社、店舗POPは現場スタッフというように、制作する人が分かれていることも少なくありません。そこに生成AIまで加わると、共通の基準がなければデザインのばらつきはさらに大きくなります。
だからこそ、Web、SNS、広告、印刷物、店舗ツールまでを別々に考えるのではなく、「この会社はどう見られたいのか」という軸を共有しておくことが大切です。
生成AIは、ブランドを崩す道具ではありません。ブランドの基準が曖昧なまま使うと、その曖昧さが表面化しやすいだけです。
AIのスピードや発想力を活かしながら、人がブランドの方向性を決め、最後に全体を見て判断する。その役割分担ができれば、生成AIはデザインの統一感を損なう存在ではなく、むしろブランド表現を効率よく広げる強力なツールになります。

まとめ
生成AIの進化によって、デザイン制作はこれまで以上に身近になりました。専門的なスキルがなくても、短時間で高品質なバナーや画像、レイアウトを作れる場面は今後さらに増えていくでしょう。
一方で、制作物が増えれば増えるほど、「一つひとつは良いのに、全体で見るとバラバラ」という問題も起こりやすくなります。
AI時代のデザインで重要なのは、毎回きれいなものを作ることではなく、「この会社らしい」と感じられる統一感を保ち続けることです。
そのためには、ブランドカラーやフォントだけでなく、写真の雰囲気、言葉遣い、余白、見出しの強さなど、「どう見せるか」という基準まで共有しておくことが大切です。
生成AIは、ブランドを壊す存在ではありません。むしろ、基準が明確であれば、スピードや発想力を活かしながら、さまざまな媒体へブランド表現を広げていく強力なツールになります。
これからは「デザインを作れること」以上に、「このデザインは自社に合っているか」「全体として統一されているか」を判断する力が、経営者や広報担当、Web担当にも求められていくでしょう。
生成AIを上手に使いこなすために必要なのは、より複雑なプロンプトだけではありません。自社のブランドをどう見せたいのか、その基準を人が持ち続けることなのです。




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