
ホームページ制作の打ち合わせで、必ずと言っていいほど止まるポイントがあります。それが「商品紹介どうしますか?」という一言です。商品はたくさんある。すべて載せるべきなのか、一部に絞るべきなのか。そもそも詳細ページは必要なのか——。ここで一気に空気が重くなる、という経験をされた方も多いのではないでしょうか。
メーカーであれば、「OEM製品は載せづらい」という壁があります。卸売業であれば、「価格は出せない」「点数が多すぎる」という問題があります。小売業であれば、「それならECにすべき?」「実店舗とどう分ける?」という悩みが出てきます。同じ“商品紹介ページ”でも、業態によって前提がまったく違うのです。
しかし実際のところ、多くの企業ホームページでは、商品紹介ページが「とりあえず作るページ」になっています。カタログのように一覧を並べる、パンフレットの文章をそのまま転載する。何のためのページなのかが整理されないまま設計されてしまうケースは少なくありません。
商品紹介ページは、単なる商品リストではありません。それは、「自社はどんな会社なのか」「どんな価値を提供できるのか」を具体的に示す、非常に重要なページです。載せる内容や載せ方ひとつで、会社の立ち位置や印象は大きく変わります。
本記事では、メーカー・卸・小売それぞれの立場から、「商品紹介ページは何をどこまで載せるべきか」を整理していきます。“正解は一つではない”けれど、“考えるべき軸は共通している”という視点で、これからリニューアルを進めるWeb担当者や営業担当者のヒントになる内容をお届けします。
まずは、すべての業態に共通する前提として、商品紹介ページの役割そのものから整理していきましょう。
まず整理すべきは「商品を売りたいのか」「会社を伝えたいのか」
商品紹介ページを設計する前に、必ず整理しておきたいことがあります。それは、「このページで何を達成したいのか」という目的です。商品そのものを売りたいのか、それとも会社の実力や対応力を伝えたいのか。この軸が曖昧なままでは、ページの構成も、載せる情報の深さも決まりません。
実は、商品紹介ページの役割は大きく分けて3つあります。
- ① 商品そのものを売るためのページ(EC型)
- ② 取扱いの幅やジャンルを伝えるページ(対応力訴求型)
- ③ 技術力・企画力・実績を証明するページ(信用形成型)
どの役割を担うのかによって、「何をどこまで載せるべきか」はまったく変わります。例えば、EC型であれば価格や在庫、配送条件が重要になります。一方で、信用形成型であればスペックの細かさよりも、「どんな用途で使われているか」「どんな背景で生まれたか」といった情報の方が価値を持ちます。
多くの企業サイトで起きている問題は、この3つが混ざってしまっていることです。売りたいのか、見せたいのか、証明したいのかが曖昧なまま、「とりあえず全部載せる」方向に進んでしまう。結果として、どの目的にも中途半端なページになってしまうのです。
商品紹介ページは、“カタログの再現”ではなく、“戦略の表れ”です。まずは「このホームページは何を強化したいのか」「この商品紹介ページはどの役割を担うのか」を言語化することが、設計の出発点になります。
メーカーの場合:商品は「実績」であり「技術証明」
メーカーにとっての商品紹介ページは、「販売カタログ」ではなく「技術のショーケース」です。特にOEM製造を行っている企業では、守秘義務や契約上の制約から、実際に手がけた製品をそのまま掲載できないケースも多くあります。
その結果、「載せられる商品が少ない」「どう見せればいいかわからない」という悩みに直面します。しかしここで大切なのは、商品を“売る対象”としてではなく、“技術の証明”として捉えることです。自社商品や公開可能な実績は、「こんなOEMも作れます」という間接的なアピール材料になります。
メーカーの商品紹介ページで重視すべきなのは、スペックの羅列ではありません。もちろん仕様やサイズ、素材などの情報は必要ですが、それ以上に重要なのは、「どんな用途で使われているのか」「どんな課題を解決したのか」といった背景情報です。これがあることで、見る側は「自社にも応用できそうだ」とイメージできます。
また、商品点数の多さは、そのまま対応力の広さを示す材料になります。すべてのOEM実績を出せなくても、ジャンルの幅や加工技術の多様性を見せることで、“引き出しの多さ”を伝えることができるのです。
ここで混同しがちなのが、「事業案内」との違いです。事業案内が「何をしている会社か」を抽象的に伝えるページだとすれば、商品紹介ページは「実際に何ができるのか」を具体的に見せるページです。抽象と具体の役割を分けることで、サイト全体に説得力が生まれます。
メーカーの場合、商品紹介ページは単なるラインナップの一覧ではなく、技術力・開発力・実績を裏付ける証拠として機能します。売るためのページではなく、「任せられる会社だ」と思ってもらうためのページ。その視点で設計することが重要です。
卸売業の場合:商品は「使い勝手」の証明
卸売業にとっての商品紹介ページは、「売るページ」ではなく「取引しやすさを伝えるページ」です。メーカーのように技術力を証明するのとも、小売のように直接販売するのとも違います。卸売業の場合、商品は「どれだけ対応できるか」を示す材料になります。
まず前提として、卸売業は取扱点数が非常に多いケースがほとんどです。すべての商品を個別ページで掲載し、詳細スペックまで網羅するのは現実的ではありません。全部を載せることより、「どのジャンルに強いのか」を整理して見せることのほうが重要です。
例えば、「生鮮」「冷凍」「加工品」「調味料」などの大枠だけでも構いません。その中で、特に得意としている分野や、よく取引される業態との相性を示すことで、見る側は「この会社なら一括で任せられそうだ」とイメージできます。商品点数の多さ=使い勝手の良さというメッセージに変換することがポイントです。
価格を出せない、在庫をリアルタイムで公開できない、といった制約があっても問題ありません。価格を見せなくても、「対応力」や「柔軟さ」は見せられます。例えば、ロット対応の幅、配送エリア、短納期対応、相談ベースでの提案力など。これらは立派なコンテンツです。
また、卸売業のWebでは、「どんな相談が多いか」を書くことも有効です。「新規開業時の仕入れ相談」「既存商品の切り替え検討」「コスト見直しのご相談」など、具体的なシーンを提示することで、問い合わせのハードルを下げることができます。商品紹介は、問い合わせのきっかけづくりでもあります。
ここで注意したいのは、商品紹介ページをカタログ化しすぎないことです。PDFカタログの置き場になってしまうと、更新が止まりやすく、Webとしての価値が薄れてしまいます。「何ができる会社か」を伝えるための構成にすることで、営業活動を補完する役割を果たします。
卸売業の場合、商品は「これを買ってください」という主役ではなく、「うちはこれだけ対応できます」という証明材料です。使い勝手の良さをどう見せるかが、設計の鍵になります。
小売業の場合:商品紹介は「EC設計」と一体
小売業にとっての商品紹介ページは、「売るためのページ」です。メーカーや卸と違い、最終消費者に直接販売する立場であれば、商品紹介はそのまま売上につながる設計が求められます。つまり、商品紹介ページとEC機能は切り離して考えないほうが良いケースが多いのです。
「とりあえず商品一覧だけ掲載して、購入は店舗で」という形も可能ですが、消費者の行動を考えると、それは少しもったいない設計です。今や多くの消費者は、商品を比較し、価格を確認し、レビューを読み、納得してから購入します。商品紹介ページがそのまま購入導線につながっているかどうかが、利便性を左右します。
小売業の場合、商品ページに必要なのはスペックだけではありません。価格、在庫状況、配送条件、返品ポリシー、レビュー、関連商品など、「購入判断に必要な情報」が揃っているかが重要です。商品紹介=購買体験の設計という視点が欠かせません。
また、EC化のメリットは売上だけではありません。どの商品が見られているのか、どこで離脱しているのか、どの価格帯が動いているのか。消費者行動のデータが取得できることは、実店舗の運営にも大きなヒントを与えてくれます。Web上の商品ページは、単なる販売窓口ではなく、マーケティングデータの入り口でもあります。
もちろん、すべての商品をEC化する必要はありません。高額商品や相談が前提の商品であれば、「問い合わせ型」の商品ページも選択肢になります。大切なのは、「この商品はどう売るのか」を最初に決めることです。
小売業における商品紹介ページは、単なる掲載ページではなく、売上とデータを生む設計の中心です。ECと一体で考えることで、その価値は最大化されます。
事業案内・会社案内との棲み分けをどう考えるか
商品紹介ページの設計で多くの企業が混乱するのが、「事業案内や会社案内と何が違うのか」という点です。内容が似てしまい、同じような文章が並び、結果としてどのページも中途半端になるケースは少なくありません。
まず整理したいのは、それぞれのページの役割です。
- 会社案内:「どんな会社か」を伝えるページ(信頼)
- 事業案内:「何をしている会社か」を伝えるページ(概要)
- 商品紹介:「具体的に何ができるか」を見せるページ(証明)
この3つは、抽象度が違います。会社案内は理念や沿革、体制などを通じて信頼を築くページ。事業案内はサービス領域や提供価値を整理するページ。そして商品紹介は、それらを“具体例”として裏付けるページです。
例えば、事業案内で「高品質な加工対応が可能」と書いてあるなら、商品紹介ページでは実際の加工事例や用途を見せる必要があります。抽象的な強みを、具体的な商品で証明するという関係です。商品紹介は、事業案内の“裏付け資料”でもあると考えると整理しやすくなります。
よくある失敗は、商品紹介ページに会社紹介の文章が大量に入り込んでしまうことです。理念や想いは大切ですが、それは会社案内の役割です。商品紹介では、「どんな商品か」「どう使われるのか」「何が強みか」に集中した方が、ページとしての役割が明確になります。
逆に、商品紹介が充実していると、会社案内の説得力も増します。「言っていること」と「見せているもの」が一致している状態になるからです。この一貫性が、企業サイト全体の信頼感につながります。
ページの役割を分けることは、情報を減らすことではありません。むしろ、伝える順番を整理することです。抽象(会社・事業)→具体(商品)という流れができると、見る側の理解もスムーズになります。
「全部載せる」か「絞る」かの判断基準
商品紹介ページの設計で、最も多く出てくる議論が「全部載せるべきか、絞るべきか」です。商品点数が多い企業ほど、この判断に時間がかかります。しかし、ここにも明確な基準があります。
まず前提として考えたいのは、そのホームページの目的は何かという点です。ECとして販売するなら、原則すべての商品を掲載する方が自然です。一方で、技術力や対応力を示すことが目的なら、「代表的な商品」や「象徴的な事例」に絞る方が効果的なケースもあります。
次に重要なのは、更新体制です。すべてを載せた結果、更新が止まってしまうのであれば、それは本末転倒です。価格や仕様が変わる商品を頻繁に扱う場合、管理できない設計はすぐに情報の信頼性を失います。続けられる設計であることが、何より優先されます。
SEOの観点からも、「全部載せる=有利」とは限りません。商品名ごとの検索を狙うのか、それともジャンル単位で見つけてもらうのかによって設計は変わります。戦略なくページ数だけ増やしても、効果は分散してしまいます。
一つの考え方として、「Webで見せる用の商品」と「実際に扱うすべての商品」を分ける方法があります。Webでは代表例や強みを示し、詳細は問い合わせ後に提示する。Webは“入口”、すべてを完結させる場所ではないと考えると、設計の負担は大きく減ります。
「全部載せるか、絞るか」の正解は、業態や目的によって異なります。ただ共通しているのは、載せる範囲を戦略的に決めることです。なんとなく全部、という選択が一番危険です。
商品紹介ページは「企業の立ち位置」を決める
商品紹介ページは、単なるラインナップ一覧ではありません。それは、その会社が「どのポジションにいるのか」を示すページです。どんな商品を載せ、どんな順番で見せ、どこまで詳しく説明するか。その設計ひとつで、「価格重視の会社」なのか「品質重視の会社」なのか、「専門特化型」なのか「総合対応型」なのかが伝わります。
例えば、代表的な商品を厳選し、その背景や開発ストーリーまで丁寧に紹介している企業は、「専門性」や「こだわり」を感じさせます。一方で、幅広いジャンルの商品を体系的に整理して掲載している企業は、「対応力」や「使い勝手の良さ」を印象づけます。載せ方そのものが、ポジショニングのメッセージになるのです。
逆に、戦略なく商品を並べると、企業の立ち位置がぼやけます。高価格帯の商品と低価格帯の商品が同じ扱いで並んでいる、強みが伝わる商品よりも数合わせの商品が目立っている——。こうした構成は、見る側に「この会社は何が強いのか?」という疑問を残します。
商品紹介ページは、企業の“強みの編集作業”でもあります。すべてを平等に扱うのではなく、「何を一番見せたいのか」を明確にすることで、会社の立ち位置がはっきりします。
また、掲載順やカテゴリの切り方も重要です。売上順に並べるのか、強み順に並べるのか、用途別に分けるのか。これらの設計は、企業がどの市場を主戦場としているのかを示すサインになります。
商品紹介ページは、商品を紹介する場所であると同時に、「私たちは、こういう会社です」と宣言するページでもあります。その視点で見直すと、掲載内容の優先順位が自然と見えてきます。

まとめ
商品紹介ページに「正解の型」はありません。しかし、「考える順番」はあります。メーカー・卸・小売で役割はまったく異なりますし、同じ業態でも戦略によって設計は変わります。
まず整理すべきは、「商品を売りたいのか」「会社を伝えたいのか」という目的です。その上で、事業案内や会社案内との棲み分けを考え、全部載せるのか、絞るのかを戦略的に判断する。商品紹介ページは“カタログの置き場”ではなく、“企業の立ち位置を示すページ”です。
メーカーであれば、商品は技術力の証明になります。卸売業であれば、使い勝手や対応力の証明になります。小売業であれば、EC設計と一体になった売上の入口になります。同じ「商品紹介」でも、意味はまったく違うのです。
リニューアルの打ち合わせで「商品紹介どうする?」と止まったときこそ、チャンスです。自社は何を一番伝えたいのか。その問いに向き合うことで、ページ設計は自然と定まります。
商品紹介ページは、作ることが目的ではありません。見込み客に「この会社なら任せられる」と思ってもらうための設計です。その視点で見直せば、載せるべき内容も、載せない内容も、判断しやすくなるはずです。
「商品紹介どうする?」で止まらないために。自社の立ち位置から逆算して、戦略的に設計していきましょう。



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