
「クラウドファンディング」という言葉を聞いたことがない、という方はほとんどいないでしょう。
一方で、実際にどんな仕組みで、どんな目的に使われているのかを正確に説明できる人は意外と多くありません。
新規事業の立ち上げや新商品の開発を検討する場面で、「資金調達の手段のひとつ」として名前は挙がるものの、
「なんとなく難しそう」「成功例ばかりが目立つ」「自分たちには関係なさそう」と感じて、詳しく調べないまま選択肢から外れてしまうケースも少なくないのが実情です。
しかしクラウドファンディングは、単なる“お金集め”の仕組みではありません。
むしろ近年では、新規事業や商品開発の初期段階において「最初のファンをつくる」「市場の反応を確かめる」ための手法として活用される場面が増えています。
日本国内でクラウドファンディングが広く知られるようになったきっかけのひとつが、2011年の東日本大震災です。
被災地支援や復興プロジェクトへの支援を通じて、「顔の見える支援」「想いに共感して応援する」という文化が広がりました。
その流れは現在、事業や商品を応援するというかたちへと姿を変えながら、定着し続けています。
特にここ数年では、
- 新商品を発売する前に、ニーズを確認したい
- いきなり大量生産するのはリスクが高い
- 広告費をかける前に、共感してくれる人を集めたい
といった課題を抱える中小企業や個人事業主にとって、クラウドファンディングは現実的な選択肢のひとつになっています。
一方で、「とりあえず掲載すれば支援が集まる」「良い商品なら自然と成功する」といった誤解が先行し、
準備不足や認識のズレによって、思うような結果につながらないプロジェクトがあるのも事実です。
本記事では、これから新規事業や商品開発を検討している方に向けて、
- クラウドファンディングの基本的な仕組み
- 国内で代表的な主要サービスの特徴
- 起案者が陥りやすい落とし穴や注意点
を、「今さら聞けない」という視点で、できるだけわかりやすく整理していきます。
クラウドファンディングを「やるか・やらないか」を判断するためにも、まずは正しい前提知識を持つことが重要です。
成功事例だけでなく、その裏側にある現実にも目を向けながら、ひとつずつ解説していきましょう。
クラウドファンディングとは?|仕組みをやさしく整理
クラウドファンディングを正しく理解するためには、まず「誰が・何を・どうやって」成り立っている仕組みなのかを押さえる必要があります。
難しそうに見える言葉ですが、構造自体はとてもシンプルです。
クラウドファンディングの基本構造
クラウドファンディングは、主に次の3者によって成り立っています。
- 起案者(プロジェクト実行者):事業や商品、企画を立ち上げる側
- 支援者:その想いや内容に共感し、金銭的に応援する側
- プラットフォーム:両者をつなぐWebサービス
起案者は、自分たちの事業内容・商品アイデア・背景にあるストーリーをプロジェクトページとして公開し、
それに共感した支援者が「支援」という形でお金を出します。
ここで重要なのは、クラウドファンディングは「お金を出してもらう場」ではなく、「想いを伝え、共感を集める場」だという点です。
そのため、単に商品スペックや価格を並べるだけでは、なかなか支援は集まりません。
なぜその事業をやるのか、なぜ今なのか、といった背景やストーリーが非常に重視されます。
「支援=投資」ではない点に注意
クラウドファンディングという言葉から、「投資に近いもの」を想像する方もいますが、
多くのプロジェクトは金融商品としての投資ではありません。
特に中小企業や個人事業主が利用するケースの多くは、
- 支援の見返りとして商品やサービスが届く
- 限定グッズや体験が用意されている
といった、いわゆる「購入型(リターン型)」の仕組みです。
支援者にとっては、「将来の利益を期待する投資」ではなく、
「応援の気持ちを込めて、先に購入する」「面白そうだから参加する」という感覚に近いものになります。
クラウドファンディングの主な方式
クラウドファンディングにはいくつかの方式がありますが、本記事で主に扱うのは以下の考え方です。
- 購入型(リターン型):商品・サービス・体験などが返礼として用意される
- 寄付型:返礼を前提としない支援(社会貢献・復興支援など)
このうち、新規事業や商品開発で多く使われているのは「購入型」です。
試作品や開発途中の商品であっても、「完成予定のものを先に応援購入する」という形が成立する点が特徴です。
つまりクラウドファンディングは、「売ってから作る」「反応を見てから進める」ことができる、非常に現代的な仕組みだと言えます。
銀行融資や補助金との決定的な違い
銀行融資や補助金と比べたとき、クラウドファンディングには大きな違いがあります。
- 事業計画の完成度よりも「共感されるかどうか」が重視される
- 審査をするのは金融機関ではなく「世の中の人」
- 結果が数字(支援額・支援者数)として可視化される
これは裏を返せば、市場からの評価をダイレクトに突きつけられるということでもあります。
だからこそクラウドファンディングは、資金調達の手段であると同時に、
「この事業は本当に求められているのか?」を確認するテストの場としても使われているのです。
なぜ新規事業・商品開発の初期に向いているのか
クラウドファンディングが新規事業や商品開発の「初期段階」で活用される理由は、
単にお金を集めやすいからではありません。
むしろその本質は、事業を本格的に動かす前に、多くのことを確認できる点にあります。
「作る前」に市場の反応を確かめられる
新商品や新サービスの開発では、
- 本当にニーズはあるのか
- 価格は適正か
- どんな点が魅力として伝わるのか
といった不確定要素が常につきまといます。
通常であれば、これらは開発・製造・リリース後に初めて分かることが多く、
その結果「思ったほど売れなかった」「想定とズレていた」という事態が起こります。
クラウドファンディングでは、実際にお金を出してくれる人の反応を見ることで、机上の市場調査では見えない「リアルな需要」を確認できます。
支援額や支援者数だけでなく、コメントや応援メッセージから、
どのポイントが刺さっているのか、逆に伝わっていないのかを読み取ることも可能です。
「最初のファン」を事業と一緒につくれる
クラウドファンディングの支援者は、単なる「購入者」ではありません。
「まだ世に出ていないもの」を応援する、最初のファンであり、共犯者のような存在です。
そのため、
- 完成を楽しみに待ってくれる
- 改善点を前向きにフィードバックしてくれる
- SNSなどで自然に拡散してくれる
といった関係性が生まれやすくなります。
これは、広告費をかけて一時的に集客するのとはまったく違う価値です。
事業が始まった瞬間から、応援してくれる人が存在するという状態は、
その後の展開に大きな影響を与えます。
「いきなり大量生産しない」判断ができる
新商品開発では、「最低ロット」や「初期投資」が大きな負担になるケースも少なくありません。
クラウドファンディングを活用すれば、
- 必要な数量の目安が事前に見える
- 支援額に応じて生産数を調整できる
- リスクを抑えたスタートが可能になる
といったメリットがあります。
「売れるか分からないものを、先に大量につくる」という従来のリスクを避けられる点は、初期フェーズの事業にとって非常に大きな意味を持ちます。
銀行融資や補助金とは役割が違う
新規事業の資金確保というと、銀行融資や補助金・助成金を思い浮かべる方も多いでしょう。
これらは事業にとって重要な選択肢ですが、
- 実績や計画書の完成度が重視される
- 結果が出るまで時間がかかる
- 「本当に求められているか」は別問題
といった側面もあります。
一方、クラウドファンディングでは、
「世の中がどう反応するか」そのものが結果として返ってくるため、
- 事業を進める判断材料になる
- 方向転換や改善のきっかけになる
- 次の資金調達や営業の説得材料になる
という実務的な価値も生まれます。
クラウドファンディングは、資金調達というより「事業の可能性を測る場」として捉える方が、初期段階ではしっくりくるかもしれません。
国内で代表的なクラウドファンディングサービス3選
日本国内には数多くのクラウドファンディングサービスがありますが、
新規事業や商品開発の初期段階で利用されることが多いのは、実績・知名度・利用者数の面で信頼性の高い主要サービスです。
ここでは、起案者(プロジェクト実行者)として検討することの多い、
代表的な3つのクラウドファンディングサービスについて、それぞれの特徴を整理します。
Makuake|新商品・新サービスに強い

Makuakeは、「まだ世の中にない商品」や「新しい体験」をいち早く世に届けることに強みを持つクラウドファンディングサービスです。
特に、
- 新商品・新ブランドのローンチ
- プロダクト単位での挑戦
- メーカーや中小企業の新規事業
といったプロジェクトとの相性が良く、「応援購入」という言葉が象徴するように、支援者は“新しいもの好き”な傾向があります。
一方で、Makuakeは審査が比較的しっかりしている点も特徴です。
誰でもすぐに掲載できるわけではなく、企画内容・実現性・表現方法などがチェックされます。
「とりあえず出してみる」では通りにくく、事前準備や見せ方が問われるサービスと言えるでしょう。
CAMPFIRE|幅広いジャンルに対応

CAMPFIREは、日本国内でも利用者数が多く、ジャンルの幅広さが特徴のクラウドファンディングサービスです。
商品開発だけでなく、
- 個人のチャレンジ
- 地域活動やイベント
- 小規模な事業の立ち上げ
など、多様なプロジェクトが掲載されています。
起案者としては、
「比較的チャレンジしやすい」「初めてでも使いやすい」と感じるケースが多く、
個人事業主やスモールスタートの新規事業にも向いています。
ただし、掲載数が多い分、
- 他のプロジェクトに埋もれやすい
- 自力での告知・集客が不可欠
といった側面もあります。
「掲載すれば何とかなる」というより、発信力や事前準備が成果を左右するサービスと考えておくとよいでしょう。

READYFOR|ストーリー性・社会性を重視

READYFORは、日本のクラウドファンディング黎明期から存在するサービスで、
「想い」や「ストーリー」を大切にする文化が根付いています。
特に、
- 社会課題の解決につながる事業
- 地域性のある取り組み
- 医療・教育・文化に関するプロジェクト
といったテーマとの親和性が高いのが特徴です。
企業の新規事業であっても、
「なぜこの事業をやるのか」「誰のためになるのか」が明確であれば、
支援者の共感を得やすい傾向があります。
一方で、READYFORでは、
単なる商品販売に近い内容や、ストーリー性が弱いプロジェクトは苦戦しやすいという側面もあります。
事業の背景や社会的な意味を丁寧に言語化できるかどうかが、成否を分けるサービスと言えるでしょう。
このように、クラウドファンディングサービスごとに
向いている事業・プロジェクトのタイプは異なります。
次の章では、これら3つのサービスを横並びで比較しながら、
「どんな事業なら、どれを選ぶべきか」を整理していきます。
3サービスを横並びで比較すると見えてくる違い
前章で紹介した3つのクラウドファンディングサービスは、いずれも国内では代表的な存在です。
しかし実際に起案者の立場で見てみると、「どれを選んでも同じ」ではないことがはっきり分かります。
クラウドファンディングの成否は、サービス選びの時点で半分決まっている
と言っても、言い過ぎではありません。
それぞれのサービスが「得意としていること」
まずは、3サービスの特徴をシンプルに整理してみましょう。
- Makuake:新商品・新サービスの話題性を広げるのが得意
- CAMPFIRE:ジャンルが幅広く、スモールスタートしやすい
- READYFOR:ストーリー性・社会性への共感を集めやすい
同じ「クラウドファンディング」でも、
支援者が期待しているもの、サービス側が評価するポイントは大きく異なります。
「事業フェーズ別」で考える向き・不向き
新規事業や商品開発といっても、そのフェーズはさまざまです。
個人・小規模事業者のスモールスタート
アイデア段階に近く、まずは小さく試したい場合は、
CAMPFIREが選ばれるケースが多くなります。
初めてのクラウドファンディングで「経験を積む」という意味でも、選択肢に入りやすい
サービスと言えるでしょう。
中小企業の新商品・新ブランド立ち上げ
ある程度形になった商品や、明確なコンセプトがある場合は、
Makuakeとの相性が良くなります。
「新しさ」「独自性」をどう見せるかが問われるため、
商品力と同時に、見せ方・伝え方の完成度が重要になります。
社会性・地域性を含む事業
社会課題の解決や、地域に根ざした取り組みの場合は、
READYFORが力を発揮します。
「売れるかどうか」よりも、「なぜやるのか」「誰のためなのか」が明確な事業ほど向いている
のが特徴です。
「有名だから」で選ぶと起きやすいミスマッチ
クラウドファンディングを検討する際、
- 聞いたことがあるから
- 成功事例をよく見かけるから
といった理由だけでサービスを選んでしまうケースも少なくありません。
しかしその結果、
- 支援者の期待とプロジェクト内容が噛み合わない
- ストーリーが弱く、反応が得られない
- 掲載はできたが、ほとんど支援が集まらない
といったミスマッチが起こることがあります。
重要なのは「どのサービスが有名か」ではなく、「自分たちの事業が、どの文脈で応援されやすいか」
です。
サービス選びは「戦略の一部」と考える
クラウドファンディングは、単体で完結する施策ではありません。
自社のWebサイト、SNS、既存顧客との関係性などと組み合わせて初めて、
本来の力を発揮します。
その起点となるサービス選びは、
- 誰に応援してほしいのか
- 何を一番伝えたいのか
- このプロジェクトのゴールは何か
を整理したうえで、慎重に判断する必要があります。
次の章では、そうした前提を踏まえたうえで、
起案者が陥りやすい「よくある誤解」について整理していきます。
起案者が勘違いしがちな「よくある誤解」
クラウドファンディングに挑戦する起案者の多くが、知らず知らずのうちに
共通した「思い込み」を抱えています。
これらの誤解は、準備不足や方向性のズレを生み、
結果として「思ったほど支援が集まらない」という状況につながりがちです。
ここでは、実際によく見られる誤解を整理しながら、
なぜその考え方が危険なのかを見ていきましょう。
誤解① 良い商品なら、自然と支援が集まる
起案者が最も陥りやすいのが、
「商品には自信があるから、きっと評価されるはず」という考え方です。
しかし実際には、
- 良い商品かどうかが伝わらない
- そもそも存在を知られていない
- 支援する理由が見えない
といった理由で、埋もれてしまうプロジェクトは少なくありません。
クラウドファンディングでは、「良い商品」より先に「伝わる説明」が求められます。
機能やスペックを並べるだけではなく、
なぜこの商品をつくったのか、どんな課題を解決したいのかまで含めて伝えなければ、
支援という行動にはつながりにくいのです。
誤解② 掲載すれば、プラットフォームが集客してくれる
「有名なサービスに載せれば、勝手に人が集まる」
というイメージを持っている方も多いかもしれません。
確かに、プラットフォーム自体に一定の集客力はありますが、
基本的に「何もしなくても支援が集まる」ことは、ほぼありません。
実際には、
- 公開初日の動き
- 既存の知人・顧客からの初期支援
- SNSやメールなどでの告知
といった起案者自身の動きが、プロジェクト全体の流れを左右します。
プラットフォームはあくまで「場」を提供しているだけであり、
集客や盛り上がりを生み出す主体は起案者だという認識が欠かせません。
誤解③ 目標金額は高いほどいい
目標金額を設定する際、
「どうせなら多めに集めたい」「後から足りなくなると困る」
と考えて、高めの金額を設定するケースも見られます。
しかし、目標金額が高すぎると、
- 達成できるイメージが湧かない
- 支援者が様子見になりやすい
- プロジェクト全体が動きにくくなる
といったデメリットが生じます。
目標金額は「夢」ではなく、「最低限、実行に必要な現実的ライン」で考えることが重要です。
達成後にストレッチゴール(追加目標)を設定するなど、
段階的な設計を前提に考える方が、支援者にとっても分かりやすくなります。
誤解④ 公開してから考えればいい
「まずは公開して、反応を見ながら調整しよう」
という姿勢でスタートするプロジェクトもあります。
しかしクラウドファンディングでは、
公開前の準備が結果の大半を決めると言われるほど、
事前設計が重要です。
公開後にできることは、実はそれほど多くありません。
公開前に、
- 誰に向けて発信するのか
- どんなメッセージを伝えるのか
- 初動で支援してくれそうな人は誰か
を整理しておかないと、
スタートダッシュに失敗し、そのまま埋もれてしまう可能性が高くなります。
クラウドファンディングで失敗しがちな落とし穴
クラウドファンディングは、正しく使えば新規事業や商品開発の大きな後押しになります。
一方で、準備や認識が甘いまま進めてしまうと、
「想像以上に大変だった」「やらなければよかった」という結果になってしまうこともあります。
ここでは、実際に起案者が陥りやすい代表的な落とし穴を整理していきます。
落とし穴① 事前準備不足という最大の問題
クラウドファンディングで最も多い失敗要因が、
「公開前の準備が圧倒的に足りていない」ことです。
具体的には、
- プロジェクトを知ってくれる人がほとんどいない
- SNSやメールでの告知計画がない
- 初日に支援してくれそうな人を想定していない
といった状態でスタートしてしまうケースです。
クラウドファンディングは「公開してからが本番」ではなく、「公開前が勝負」
と言われる理由はここにあります。
特に公開初日の動きは重要で、
初動が鈍いプロジェクトは「人気がない」と判断され、
その後も支援が集まりにくくなる傾向があります。
落とし穴② ストーリーが「内輪向け」になっている
起案者にとっては当たり前の背景や想いも、
第三者である支援者にとっては初めて触れる情報です。
しかし実際には、
- 業界用語が多すぎる
- 自社の事情説明に終始している
- 「だから何?」が見えない
といった、内輪向けのストーリーになってしまうケースが少なくありません。
クラウドファンディングで求められるのは、「自分たちの想い」ではなく「支援者が共感できる理由」
です。
その事業や商品が、
誰にとって、どんな価値があるのかを、
専門知識がない人にも伝わる言葉で説明する必要があります。
落とし穴③ リターン設計の甘さ
支援者が実際に「支援するかどうか」を判断する際、
リターン(返礼)の内容は非常に重要な要素です。
しかし、
- 魅力が伝わりにくい
- 価格設定が分かりづらい
- 選択肢が多すぎて迷う
といったリターン設計では、支援につながりにくくなります。
さらに起案者側の落とし穴として、
- 原価や送料を正確に見積もれていない
- 想定以上に手間がかかる
- 支援が増えるほど赤字になる
といった実務面のトラブルも起こりがちです。
「集まった金額」ではなく、「最終的に何が残るのか」を基準に設計することが重要
です。
落とし穴④ 達成後・終了後を考えていない
目標金額を達成した瞬間がゴールだと考えてしまうのも、
よくある落とし穴のひとつです。
実際には、プロジェクト終了後に、
- 製造・開発の遅れ
- 発送トラブル
- 問い合わせ対応の増加
といった現実的な業務が一気に発生します。
対応が後手に回ると、
- 支援者の不満が高まる
- SNSやレビューで悪い印象が残る
- 次の事業展開に悪影響が出る
といった事態にもなりかねません。
クラウドファンディングは「一度きりの企画」ではなく、事業の入口である
という意識が欠かせません。
次の章では、こうした失敗を避けるために、
「やる前に必ず考えておきたいチェックポイント」を整理していきます。
「やる前」に必ず考えておきたいチェックポイント
クラウドファンディングは、勢いだけで始めてしまうと失敗しやすい取り組みです。
だからこそ重要なのが、「本当に今やるべきか」「自分たちに合っているか」を、
事前に冷静に整理しておくことです。
ここでは、起案前に必ず確認しておきたいポイントをチェックリスト形式でまとめます。
この事業・商品はクラウドファンディング向きか?
すべての事業や商品が、クラウドファンディングに向いているわけではありません。
- 新規性・話題性があるか
- 背景やストーリーを語れるか
- 「今、応援する理由」があるか
単なる価格競争商品や、すでに一般流通しているものは、クラウドファンディングでは魅力が伝わりにくい
傾向があります。
「誰に応援してほしいのか」が明確か?
クラウドファンディングでは、
「不特定多数に届けばいい」という考え方は危険です。
- 最初に支援してくれそうな人は誰か
- 既存顧客・取引先・知人との関係性はどうか
- その人たちは、どんな価値に共感しそうか
最初の支援者が具体的に思い浮かばない場合、プロジェクトはスタート前から苦戦する可能性が高い
と言えるでしょう。
ゴールは「資金」なのか、「ファン」なのか
クラウドファンディングの目的は、
- 開発資金を確保したい
- 市場の反応を見たい
- 初期ファンをつくりたい
など、プロジェクトごとに異なります。
このゴール設定が曖昧なまま始めると、目標金額・リターン設計・発信内容がすべてブレてしまいます。
「いくら集めたいのか」だけでなく、
「集まったあと、どう事業につなげるのか」まで考えておくことが重要です。
公開前の告知・発信の準備はできているか
クラウドファンディングは、公開した瞬間から注目を集める必要があります。
- SNSやメールで告知できるリストはあるか
- 事前に相談・共有できる相手はいるか
- 公開初日に動いてくれそうな人はいるか
「公開してから考える」では遅く、少なくとも公開前から動き始める必要があります。
終了後の対応まで想定できているか
プロジェクトが成功した場合、
- 製造・開発のスケジュール
- 発送・提供方法
- 問い合わせやフォロー体制
といった現実的な業務負荷が発生します。
「集めるところまで」ではなく、「終わった後まで」見据えられているかどうかが、事業としての成否を分けます。
これらのチェックポイントを整理したうえで、
「それでも挑戦する価値がある」と判断できた場合、
クラウドファンディングは新規事業の大きな武器になります。
クラウドファンディングは「魔法の資金調達」ではない
ここまで読んでいただくと、クラウドファンディングが
新規事業や商品開発にとって有効な手段であることは、ある程度イメージできたのではないでしょうか。
一方で、あえて強調しておきたいのが、
クラウドファンディングは決して「やれば何とかなる魔法の資金調達」ではない
という点です。
向いているケース・向いていないケースがある
クラウドファンディングは、万能な手法ではありません。
例えば、
- 価格や条件だけで比較される商品
- 背景やストーリーを語りにくい事業
- すでに一般流通している既存商品
といったケースでは、通常販売や営業のほうが成果につながりやすい場合もあります。
「クラウドファンディング向きかどうか」を見極めずに始めること自体が、失敗の原因になる
という点は、あらためて意識しておく必要があります。
クラウドファンディング単体では完結しない
もうひとつ重要なのが、クラウドファンディングは
それ単体で完結する施策ではないという点です。
実際に成果を出しているプロジェクトの多くは、
- 自社のWebサイトやLP
- SNSでの発信
- 既存顧客や取引先との関係性
といった既存の接点と連動しています。
クラウドファンディングは「きっかけ」であって、「すべて」ではありません。
むしろ、
- どこで事業の背景を詳しく伝えるのか
- 支援後にどんな導線で関係性を継続するのか
- 次の販売・サービス提供につなげる仕組みはあるか
といった全体設計がなければ、
一時的に支援が集まっても、事業としては積み上がりません。
「数字」が冷静な判断材料になる
クラウドファンディングの特徴のひとつが、
支援額や支援者数といった数字が、誰の目にも分かる形で残ることです。
これは時に厳しい現実を突きつけますが、
事業の可能性を感覚ではなく、実データで判断できる
という大きなメリットでもあります。
「思ったより支援が集まらなかった」
「反応が限定的だった」
という結果であっても、それは失敗ではなく、重要な判断材料です。
方向性を見直す、ターゲットを変える、売り方を調整する――
そうした次のアクションにつなげられるかどうかが、起案者の腕の見せどころと言えるでしょう。
過信しないからこそ、武器になる
クラウドファンディングは、
- 事業を一気に成功させてくれる仕組み
- 資金不足をすべて解決してくれる手段
ではありません。
しかし、
「正しい位置づけ」で使えば、新規事業のスタートを支える強力な武器
になるのも事実です。

まとめ|クラウドファンディングを“成功体験”にするために
クラウドファンディングは、2011年の東日本大震災をきっかけに日本で広く知られるようになり、
現在では新規事業や商品開発の初期段階で、現実的な選択肢のひとつとして定着しています。
ただし本記事で見てきた通り、
クラウドファンディングは「出せば支援される仕組み」でも、「魔法の資金調達」でもありません。
成功しているプロジェクトの裏側には、
- 事前にしっかりと準備されたストーリー
- 誰に向けた挑戦なのかという明確な視点
- 公開前から動いてくれる応援者の存在
といった地道な設計と発信の積み重ねがあります。
一方で、
- 自分たち目線だけで語ってしまう
- サービス選びを感覚で決めてしまう
- 終了後の対応まで想定していない
といったケースでは、
「思ったほど集まらない」「次につながらない」結果になりやすいのも事実です。
クラウドファンディングを成功体験にできるかどうかは、「集まった金額」ではなく、その後に何が残ったかで決まります。
支援してくれた人との関係性、事業に対する手応え、数字として残った反応。
それらは、次の一手を考えるうえで、非常に価値のある資産になります。
新規事業や商品開発を進めるなかで、
- いきなり大きな投資をするのが不安
- 市場の反応を見ながら進めたい
- 最初のファンをつくりたい
と感じているのであれば、
クラウドファンディングは検討する価値のある手法だと言えるでしょう。
その際はぜひ、
「やること」そのものを目的にするのではなく、「事業にどう活かすか」
という視点で向き合ってみてください。
クラウドファンディングは、正しく理解し、正しく使えば、
新規事業のスタートを支える心強い味方になります。
この記事が、その判断材料のひとつになれば幸いです。



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