
ロゴや名刺、パンフレットなどをお願いしたデザイナーの仕上がりがとても良かった場合、「ホームページも同じ人にお願いしたい」と考えるのは自然なことです。
ブランドの世界観やトーンを揃えやすいという意味では、大きなメリットがあります。
ただし、グラフィックデザインとWebデザインでは、求められる知識や設計の考え方が少し異なります。
紙のデザインが素晴らしいことと、成果につながるWebサイトを設計できることは、必ずしも同じではありません。
今回は、グラフィックデザイナーにそのままWebサイトも依頼する場合のメリットと注意点、そして依頼先を見極めるときに考えたいポイントをご紹介します。
紙とWebは、同じ「デザイン」でも大きく違う
ロゴや名刺、チラシ、パンフレットなどのグラフィックデザインと、Webサイトのデザインには共通する部分がたくさんあります。配色、文字組み、写真の使い方、余白、ブランドらしさを表現する力などは、どちらにも欠かせません。
一方で、Webサイトには紙にはない特徴があります。大きな違いは、完成したデザインが常に同じ状態で見られるわけではないことです。
Webデザインでは、美しい画面をつくる力だけでなく、さまざまな環境で「使いやすく機能する状態」を設計する力が必要です。
Webサイトは見る環境によって形が変わる
印刷物は、名刺なら名刺、A4チラシならA4というように、基本的に完成サイズが決まっています。
しかしWebサイトは、スマートフォン、タブレット、ノートパソコン、大きなモニターなど、見る人によって画面サイズが異なります。
パソコンでは横に並んでいた情報をスマートフォンでは縦に並べるなど、画面幅に合わせてレイアウトを変化させる「レスポンシブデザイン」への理解も必要です。
Webサイトは「見るもの」であると同時に「使うもの」
紙のデザインでは、基本的に完成した情報を見てもらうことが中心です。一方、Webサイトでは、スクロールする、メニューを開く、ボタンを押す、別のページへ移動する、フォームへ入力するといった操作が発生します。
そのため、見た目として美しいだけではなく、「どこを押せばいいのか」「次に何をすればいいのか」が直感的に分かることも重要です。
Webサイトでは、デザインそのものがユーザーの行動を案内する役割を持っています。
実際の動きまで考えてデザインする
さらにWebでは、ボタンに触れたときの変化、メニューの開閉、画像の切り替え、スクロールによる表示など、動きを含めて設計することがあります。
どれだけ一枚の完成イメージが美しくても、実際にWebサイトとして動かしたときに使いにくかったり、スマートフォンで崩れたりすれば、良いWebデザインとは言えません。
紙とWebの大きな違いは、Webが「固定された作品」ではなく、見る環境や操作によって変化するデザインだという点にあります。
Webサイトは「情報整理」と「導線設計」が難しい
Webサイトが紙のデザインと大きく異なるもう一つの点が、扱う情報量と、その情報をどの順番で見せるかという設計です。
会社案内、サービス紹介、料金、実績、よくある質問、ブログ、問い合わせなど、Webサイトには多くの情報が存在します。しかも、すべての人がトップページから順番に見るわけではありません。
Webデザインでは、「きれいに情報を並べること」よりも、「必要な人が必要な情報へ迷わずたどり着けること」が重要です。
ユーザーによって入口も目的も違う
ある人はGoogle検索からサービスページへ直接アクセスし、ある人はSNSからブログ記事を読み、そこから会社概要を見るかもしれません。
さらに、問い合わせをしたい人、料金だけ確認したい人、実績を見たい人など、ホームページを訪れる目的もさまざまです。
そのため、どのページから入っても次に必要な情報へ進めるよう、ページ同士のつながりを考える必要があります。
「次に何をしてほしいか」まで設計する
集客を目的とするWebサイトであれば、最終的には問い合わせや資料請求、予約などにつなげる必要があります。
そのためには、サービスの説明を読んだあとに実績を見せる、料金を確認したあとによくある質問へ案内するなど、ユーザーが自然に判断できる順番を設計することが大切です。
こうした「次にどこへ進んでもらうか」という考え方を、Webでは導線設計と呼びます。
情報量が多いほど「削る判断」も必要になる
Webサイトはページを増やしやすいため、伝えたい情報をすべて掲載することもできます。しかし、情報が多ければ分かりやすくなるとは限りません。
何を目立たせるのか、何を別ページへ分けるのか、どの情報は思い切って省くのかまで判断する必要があります。
Webサイトのデザインとは、情報を装飾することではなく、「誰に、何を、どの順番で伝えるか」を設計する仕事でもあるのです。
では、紙のデザイナーにWebサイトを頼んではいけない?
ここまで読むと、「では、グラフィックデザイナーにはWebサイトを頼まない方がいいのか」と感じるかもしれません。しかし、決してそういう意味ではありません。
グラフィックデザインとWebデザインの両方に精通しているデザイナーもいますし、ブランドの世界観を深く理解している人が、そのままWebサイトのアートディレクションまで担当することで、非常に統一感の高いサイトになることもあります。
大切なのは、「紙のデザイナーか、Webデザイナーか」という肩書きではなく、Web特有の設計や技術を理解した体制になっているかどうかです。
「そのデザイナーの作品として仕上げたい」なら相性は良い
ロゴやパンフレットの世界観をそのままWebにも展開したい、そのデザイナーならではの表現をサイト全体で見せたい、という目的であれば、同じ人に依頼するメリットは大きいでしょう。
特にブランドサイトやキャンペーンサイトなど、世界観やビジュアル表現そのものが大きな価値になるWebサイトでは、グラフィックデザイナーの感性が強く活きることがあります。
Web部分だけ専門家と協業する方法もある
一方で、デザインの方向性やビジュアルはグラフィックデザイナーが担当し、情報設計やスマートフォン対応、実装、SEOなどはWeb制作会社が担当するという方法もあります。
このように、それぞれの専門性を組み合わせれば、ブランドの統一感を保ちながら、Webサイトとしての使いやすさや機能性も両立できます。
一人ですべてを完結できることよりも、必要な専門性をきちんと補える体制になっていることの方が重要です。
「Web未経験」なら慎重に判断する
ただし、これまでWebサイトの制作経験がほとんどなく、レスポンシブ対応や画面上での操作、情報設計についても経験がない場合は、慎重に考えた方がよいでしょう。
紙のデザインで非常に高い評価を受けている人でも、その能力がそのままWebサイトで発揮できるとは限りません。逆に、Webに必要な知識を学び、実績を積んでいるグラフィックデザイナーであれば、十分に選択肢になります。
「センスが良いからWebも任せられる」と考えるのではなく、Webサイトとしての経験や制作体制まで確認したうえで判断することが大切です。
集客・営業・採用を目的にするなら「Web経験」を確認する
Webサイトを単なる作品として見せるのではなく、集客や営業、採用などの成果につなげたいのであれば、デザインの美しさだけでなく、Webサイトとしての経験や設計力を確認することが重要です。
「見た目が良いサイトを作れるか」ではなく、「目的に合わせてWebサイトを設計できるか」を見る必要があります。
制作実績は「見た目」だけで判断しない
Webサイトの制作実績を見るときは、配色や写真、レイアウトだけではなく、スマートフォンでも見やすいか、問い合わせや予約への導線が分かりやすいか、必要な情報へたどり着きやすいかまで確認しましょう。
集客を目的とするならSEOへの理解、採用なら応募までの情報設計、営業支援なら実績やサービスの見せ方など、目的によって必要な設計は変わります。
「作ったことがある」より「どう考えて作ったか」
単に「Webサイト制作の経験がありますか?」と聞くだけではなく、「このサイトでは何を目的に、どのような導線を考えましたか?」と確認すると、その人のWebに対する理解が見えやすくなります。
また、CMSによる更新性、表示速度、SEO、アクセシビリティ、公開後の管理など、見た目以外の部分をどこまで考えているかも大切です。
成果を求めるWebサイトでは、完成時の美しさだけでなく、公開後に「使われ続けること」まで設計できるかが重要です。
集客・営業・採用を目的にするなら、デザイナーの作品を見るだけでなく、そのWebサイトが「何のために作られ、どう成果につなげる設計になっているか」まで確認しましょう。
アトラボの考え方|デザインには「上下」ではなく「専門」がある
アトラボでは、グラフィックデザイナーとWebデザイナーのどちらが優れている、という考え方はしていません。
ロゴにはロゴの専門性があり、パンフレットやパッケージにはグラフィックデザインの専門性があります。そしてWebサイトには、画面上での見え方や操作性、情報設計、導線、更新性など、Webならではの専門性があります。
デザインには「上下」ではなく「専門」があります。大切なのは、目的に合った専門性を正しく組み合わせることです。
ブランドの統一感とWebの成果は両立できる
例えば、ロゴやパンフレットを手がけたデザイナーがブランド全体のアートディレクションを担当し、Web制作会社が情報設計やUX、実装を担当する方法もあります。
こうした体制であれば、ブランドの世界観を守りながら、Webサイトとしての使いやすさや集客力も高めやすくなります。
無理に一人へすべてを任せるより、それぞれの得意分野を活かす方が、結果として良いものができるケースも少なくありません。
判断基準は「誰に頼むか」より「何を実現したいか」
デザイン性の高いブランドサイトをつくりたいのか、問い合わせを増やしたいのか、採用を強化したいのか。目的によって、必要な人材や制作体制は変わります。
だからこそ、最初から「この人に全部お願いする」と決めるのではなく、そのWebサイトで何を実現したいのかを整理したうえで、必要な専門家を選ぶことが大切です。
「誰に全部任せるか」ではなく、「誰の専門性を、どこで活かすか」と考えることが、ブランドと成果を両立する近道です。

まとめ
ロゴや名刺、パンフレットを手がけたデザイナーに、そのままWebサイトもお願いしたいと考えるのは自然なことです。ブランドの世界観を統一しやすいという点では、大きなメリットもあります。
一方で、Webサイトには、画面サイズへの対応、操作性、情報設計、導線、更新性など、紙のデザインとは異なる専門性があります。
紙のデザインが素晴らしいことと、成果につながるWebサイトを設計できることは、必ずしも同じではありません。
だからこそ、判断するときは「紙のデザイナーか、Webデザイナーか」という肩書きだけで決めるのではなく、その人や制作チームにWebサイトとしての経験や知識があるかを確認することが大切です。
もし、そのデザイナーならではの世界観をWebでも表現したいのであれば、そのまま依頼することが正解になる場合もあります。反対に、集客や営業、採用などの成果を重視するのであれば、Web設計やUX、SEO、運用まで含めて対応できる体制かどうかを見極める必要があります。
必要であれば、グラフィックデザイナーがブランドやビジュアルを担当し、Web制作会社が情報設計や実装を担当するという協業も有効です。
大切なのは、「誰にデザインしてもらいたいか」だけで決めることではありません。「そのWebサイトで何を実現したいのか」から逆算して、必要な専門性を選ぶことです。
デザインには上下ではなく、それぞれの専門があります。その専門性を正しく組み合わせることが、ブランドの統一感とWebサイトの成果を両立する近道なのです。




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