
採用サイトや採用特設ページでよく見かける人気コンテンツのひとつに、「数字で見る〇〇」があります。
勤続年数、男女比、平均年齢、有給取得日数、育休取得率…。
求職者にとっては「働くイメージ」が湧くうえ、会社の“誠実さ”が伝わるポイントとして、非常に効果的なコンテンツです。
しかし実際に制作を進めていくと、こんな場面に出くわすことがあります。
- 「営業先に見られたらちょっとマズいかな…」
- 「この数字は、役員があまり出したくないって言ってて…」
- 「競合に見られると困るから、できれば非公開で」
たしかに、社内の視点では“出したくない数字”かもしれません。
でも、ちょっと待ってください。その数字を見たいと思っているのは、求職者のほうなのです。
本記事では、採用担当者や広報担当者が「なぜその数字を出す必要があるのか?」を社内に説明できるようになるために、「求職者の目線」と「社内の目線」の違いを整理しながら、“見せ方”の工夫や調整方法も含めてご紹介します。
採用サイトは、ただの“会社の宣伝”ではありません。
入社後のミスマッチを防ぎ、「ここなら安心できそう」と思ってもらうための情報設計が大切です。
そのひとつとして、どう「数字」と向き合っていくか、今こそ見直してみませんか?
「社内の目」と「求職者の目」はまったく違う
採用コンテンツを作成していると、社内から「この情報、見られたら困るかも」という意見が出てくることは少なくありません。
たとえば、勤続年数が短い、女性比率が低い、有給取得率が低い、平均年齢が高いなど…。
確かに、社内の感覚では「ちょっとマイナスに見られるかも」と感じるかもしれません。
でも、求職者はその数字を“減点”ではなく、“判断材料”として見ているという視点が抜けてしまいがちです。
社内の人間は、社風や背景を理解しているため、「この数字だけでは伝わらない」「誤解されるのでは」という懸念を抱きます。
しかし、求職者にとっては会社の中身を知るための“数少ない客観的な情報”。むしろ、何も情報が載っていない方が不信感を抱かれます。
特に中小企業においては、「どんな人が働いているのか」「本当に自分に合う会社なのか」を確かめたくてサイトを見に来ていることが多いもの。
つまり、見せるべき情報を社内目線で削ってしまうことは、採用の機会損失につながってしまうのです。
「この数字、大丈夫かな?」と社内で迷ったときは、ぜひ「それを知らない応募者が不安になるかどうか」という視点で再考してみてください。
大事なのは“数字を出すかどうか”ではなく、「どんな文脈で、どんな説明と一緒に見せるか」なのです。
数字は“良し悪し”より「開示姿勢」が信頼を生む
「勤続年数が短いから」「有給取得率が低めだから」…
そういった理由で掲載をためらうケースは少なくありません。
けれども、その数字自体よりも「ちゃんと出している」こと自体が、求職者には安心材料になります。
たとえば、勤続年数が平均3年だったとします。長いとは言えませんが、その数字と一緒に「なぜそうなのか」「改善しようとしていること」などを添えることで、会社の姿勢が伝わります。
逆に、あえて数字を隠していた場合、求職者はこう感じます。
「この会社、何か隠してるのかな?」と。
つまり、“出していないこと”自体が、リスクになるのです。
特に、今の求職者層は“リアル”に敏感です。SNSで人柄や社内の空気感をチェックし、「会社の誠実さ」を重視している人も多い中、数字を包み隠さず開示している企業には、ポジティブな印象を抱きやすいのです。
もちろん、数字の見せ方には工夫が必要な場合もあります。ですが、ありのままを見せようとする姿勢は、どんな業界・規模であっても、企業の信頼性を高める要素になります。
“都合の良い数字だけ”ではなく、“全部をさらけ出す”わけでもなく、「伝える意志がある」ことが採用広報として大切なのです。
よくある「掲載NG」の声と、その返し方
「数字で見る会社情報」を作ろうとすると、社内から必ずと言っていいほど出てくるのが「それは載せないほうがいいのでは?」という声です。
ここでは、採用現場でよく聞く代表的な「掲載NG意見」と、それに対して人事・採用担当としてどう説明すべきかを整理してみましょう。
①「営業先や取引先に見られたくない」
この意見は非常によく出ますが、採用サイトは“営業資料”ではなく“求職者向けメディア”です。
取引先が気にする数字と、求職者が安心する数字はそもそも目的が違います。
返し方の例:
「これは取引条件を判断するための情報ではなく、入社後の働き方をイメージしてもらうための情報です。採用ページ内に限定して掲載します」
②「役員・上層部が嫌がりそう」
役員の方が懸念するのは、多くの場合「数字だけが独り歩きすること」。
であれば、数字+補足説明(背景・改善中の取り組み)をセットで掲載することで、その不安はかなり軽減できます。
返し方の例:
「この数字単体ではなく、会社としてどう捉えているか・どう改善しているかも一緒に載せます」
③「他社と比較されて不利になるのでは?」
実は求職者は、細かく数値比較をして順位付けしているわけではありません。
それよりも、「ちゃんと開示している会社かどうか」を見ています。
返し方の例:
「数字の良し悪しよりも、開示姿勢そのものが評価されています。何も出していない方が不安を与えます」
④「マイナスに見える数字だから出したくない」
一見マイナスに見える数字ほど、実は求職者が気にしているポイントです。
隠すよりも、理由や実情をきちんと説明したほうがミスマッチ防止につながります。
返し方の例:
「この数字に納得できない方は、入社後に不満を感じる可能性があります。あらかじめ伝えることで、定着率向上にもつながります」
「載せる・載せない」の議論は、「採用で何を防ぎたいか」「誰に向けた情報か」を明確にすることで、建設的な話し合いに変わります。
採用担当者が“求職者目線の翻訳役”になることが、これからの採用広報では重要なのです。
求職者が安心する「数字」の種類とは
数字コンテンツを作るうえで、つい「業績」や「売上高」「取引社数」などをメインに考えがちですが、求職者が知りたいのは“そこで働く自分の姿”がイメージできる情報です。
ここでは、実際に求職者からのニーズが高い「安心につながる数字」の具体例を紹介します。
■ 勤続年数(平均/最長/年代別)
「長く働ける会社かどうか」を見極める代表的な指標。短くても“なぜ短いのか”の補足があればOK。
■ 男女比/平均年齢/既婚率
働く人の属性がわかると、「自分もなじめそうか」が判断しやすくなります。
■ 有給取得率/年間休日数/残業時間
ライフスタイルに直結する要素。「働き方の柔軟性」が見えると、応募意欲が上がります。
■ 育児休暇・介護休暇の取得実績
特に若年層・女性求職者にとって重要な情報。制度だけでなく「取得者がいる」ことがポイント。
■ 配属部署比率(職種ごとの人数など)
営業と技術職の比率、店舗と本部の人数など、構造が見えるとリアルな業務環境が伝わります。
■ 通勤手段/社員の居住エリア比率
地味ですが“生活のしやすさ”を想像する手がかりとして有効。地元採用なら特に効果あり。
■ 離職率(または定着率)
センシティブな数字ですが、定着率ベースで出せばポジティブに見せられます。
出すか迷う数字ほど、実は求職者がいちばん気にしているという前提を忘れずに。
これらの情報は、単なるデータではなく“安心を伝えるための材料”です。
数字に込められた背景や考え方を一緒に示すことで、「ちゃんと教えてくれる会社」「誠実な会社」という印象を持ってもらえるのです。
「数字を出す」ことのメリットと掲載の工夫
数字コンテンツを採用サイトに載せることには、実は多くのメリットがあります。
ただ掲載するだけでなく、“どう見せるか”を工夫することで、より強力な採用コンテンツに仕上がります。
■ 数字を出すメリット
- ● 信頼感が高まる:客観的な情報を公開している会社は誠実に見える
- ● 応募のハードルが下がる:「自分に合いそう」と感じてもらいやすくなる
- ● ミスマッチを防げる:入社前のギャップが減り、離職率の低下にもつながる
- ● 競合との差別化になる:同業他社があまり出していないときこそ効果的
■ 掲載の工夫ポイント
- ● 数字+ひと言コメントを添える:
例)「平均勤続年数:3.2年 ▶ 若手の定着率向上に向け、1on1制度を導入中」 - ● グラフやアイコンでビジュアル化:
視覚的にわかりやすくなるだけでなく、ポジティブな印象を持たれやすい - ● 「業界平均」と並べて相対評価を見せる:
少し低い数字でも、“この業界としては十分”という安心感を出せる - ● ネガティブに見える数字は「改善の意志」とセットで:
「現在○○%ですが、2025年までに○○%を目指しています」と目標も書く
数字は事実を見せるだけでなく、“会社の姿勢”を伝えるツールでもあります。
採用広報の目的は「良い会社に見せること」ではなく、「誤解のない採用と信頼関係の構築」であることを意識して設計していきましょう。
「出すか迷う数字」の扱い方・グレーゾーンの対処法
採用コンテンツでよくあるのが、「出したいけど、ちょっと抵抗がある」「社内的に出しづらい」といった“グレーな数字”の存在です。
こうした数字こそ、求職者の関心が高く、“見えない”ことで不安が増す部分でもあります。
■ 代表的な「迷いやすい数字」
- 離職率
- 残業時間の平均
- 有給取得日数・取得率
- 男女比の偏り
- 育休・産休の取得実績
- 中途 vs 新卒の割合
■ 出すか迷ったときのチェックポイント
- ● 求職者が応募前に気にする項目か?
- ● 出さないことで「隠してる」と思われないか?
- ● 数字だけでなく、文脈で補えるか?
■ 出せない場合の“代替案”
- ● 定性的な表現に置き換える:
「若手社員が多数活躍中」「女性社員も複数在籍」など、事実ベースのぼかし表現 - ● セグメントを限定して出す:
「3年以上勤務者の平均勤続年数」など、ポジティブな範囲に絞って提示する - ● 推移・目標を示す:
「現在○○%ですが、○年後に○○%を目指しています」と未来志向に - ● よくある質問(FAQ)で補完:
本文では出しづらい数字も、FAQ形式なら柔らかく伝えられる
すべての数字を完璧に開示する必要はありません。
大切なのは、「伝えようとしている姿勢」や「背景の説明」があるかどうかです。
迷う数字ほど丁寧に扱い、“不安の種”をつぶしていくことが、信頼獲得につながります。
アトラボでは「数字で伝える」採用コンテンツ設計も支援しています
「この数字、出して大丈夫?」「ネガティブに見えないようにしたい…」
そんな不安を抱えるご担当者さまのために、アトラボでは“数字の出し方”も含めた採用コンテンツ設計をサポートしています。
業種・企業規模・採用ターゲットに応じて、以下のようなご提案が可能です。
- ● 数字で見る◯◯の構成案・掲載項目の選定
- ● 出すか迷う項目への代替案・表現調整
- ● 誤解されない見せ方(グラフ・補足文・業界比較など)
- ● 採用パンフレットや会社説明会スライドとの整合性調整
- ● 社内稟議が通しやすいよう、制作目的や意義の資料化
求職者にとっては「数字」こそが、会社のリアルに触れる第一歩です。
だからこそ、「見せ方」まで設計することが、採用広報の信頼性を高める近道。
アトラボでは、採用ブランディング・サイト設計・原稿作成・撮影・SNS連携まで一気通貫でサポートしています。
「うちの会社にとって最適な“数字の見せ方”を相談したい」
そう感じたら、ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ|“数字の良し悪し”より、“伝える姿勢”が信頼を生む
「この数字、出しても大丈夫だろうか?」
採用サイトを制作する過程で、そんな迷いが生じるのは自然なことです。
ですが、数字の“内容”よりも、数字を“どう伝えるか”の姿勢こそが、求職者の信頼を左右します。
数字を出すことで、自社にとって少し都合の悪い面が見えることもあるかもしれません。
けれど、それは隠しても、いずれ「入社後のギャップ」として浮かび上がってしまいます。
それならば、丁寧に、誠実に、文脈とともに伝える方が、ずっと“ミスマッチのない採用”につながります。
特に、今の求職者世代は、企業の“リアル”を敏感に読み取ろうとしています。
都合の良い情報だけで飾られたサイトより、「きちんと教えてくれる会社」の方が、魅力的に映るのです。
「どの数字を出すべきか迷っている」「社内の理解を得にくい」——そんなときこそ、採用広報の目的に立ち返って考えてみましょう。
本当に伝えるべき相手は、“まだ出会っていない未来の仲間たち”です。



コメント