サーバー会社からのメール?実は巧妙な“なりすまし”かもしれません
ここ最近、「ドメイン更新の支払いができていません」「メールサーバーがいっぱいです」などと書かれたメールを受け取ったことはありませんか?一見すると、契約しているレンタルサーバー会社から届いたように思えるメールでも、実は巧妙に作られた「なりすましの迷惑メール」であるケースが増えてきています。
こうしたメールは、Amazonや楽天などの大手ECサイトを装った一般向けの迷惑メールとは異なり、企業のWeb担当者や総務・経営者を狙った“業務寄り”の内容になっているのが特徴です。
アトラボにも、「このメールって本物ですか?」「うっかりリンクを開いてしまいました…」といったお問い合わせが増えてきています。万が一、詐欺サイトにアクセスしてしまうと、ウイルス感染や個人情報・顧客情報の流出など、企業の信用問題に発展する可能性もあるため、早めの対応が重要です。
この記事では、最近の迷惑メールの手口や見分け方、社内での注意喚起方法をわかりやすく解説するとともに、アトラボでの対策事例もご紹介します。Webやメールの知識がそれほどなくても理解できる内容にしていますので、総務や経理など、IT専任でない担当者の方にもぜひ読んでいただきたい内容です。
最近増えている「サーバー系なりすましメール」の具体例
これまで多かった迷惑メールといえば、「Amazonのアカウントに不正アクセスがありました」「支払い情報に不備があります」など、個人ユーザーを狙ったものが主流でした。しかし、最近は企業のWeb担当者や経営者を狙った“業務系”のなりすましメールが急増しています。
以下のような件名・内容には、特に注意が必要です。
【例1】「ご利用中のメールサーバーが容量制限に達しました」
- 件名:「メールボックスが制限容量を超えました」
- 本文:「お客様のメールボックスが容量上限に達しています。新しいメールの受信を継続するには、以下のリンクから確認してください。」
- ポイント: 実際の契約先の名前を騙ることがあり、リンク先は本物そっくりの偽ページ。
【例2】「ドメイン更新の支払いが確認できません」
- 件名:「【重要】ドメイン更新失敗のお知らせ」
- 本文:「お客様のドメイン(example.com)の更新が失敗しました。サービス停止を避けるため、下記よりクレジットカード情報を更新してください。」
- ポイント: 具体的なドメイン名や契約日が書かれており、本物と思わせる演出がされている。
【例3】「メールアカウントの自動停止について」
- 件名:「アカウント停止処理が開始されました」
- 本文:「24時間以内にご対応がない場合、メールアカウントが停止されます。復旧手続きを行ってください。」
- ポイント: “今すぐ対応しないと使えなくなる”と焦らせるのが特徴。リンク先はウイルス感染や情報搾取のリスクあり。
このようなメールは、メールアドレスの送信元を偽装していることが多く、ぱっと見では見分けがつきにくいのが厄介です。リンクをクリックしたり、添付ファイルを開いたりする前に、必ず「本当にその会社から来たものか?」を確認する習慣をつけましょう。
なぜ騙されやすくなっているのか?
最近の迷惑メールは、件名や送信元のアドレス、メール本文の内容まですべてが精巧に作られており、一見して「本物」と見分けがつかないケースが増えています。特に、Webやサーバーに詳しくない担当者がメール対応も兼務しているような企業では、ついうっかりクリックしてしまう危険性が高くなっています。
1. 本物の「請求メール」や「容量通知メール」に酷似している
多くの企業では、ドメインやサーバー、メールの契約管理をクラウド上で行っており、実際に「更新のお知らせ」や「容量の通知」がメールで届くことがあります。なりすましメールは、その文面をそっくり真似て作られているため、普段と同じだと思って信用してしまいやすいのです。
2. 送信元アドレスの偽装が巧妙
「@example.co.jp」や「support@お名前.com」など、本物そっくりのメールアドレスが表示されるようになっています。実際には異なるサーバーから送られているにも関わらず、受信側のメールソフトによっては表示だけがそれっぽく見えるため、騙されやすくなっています。
3. 時間帯や緊急性をあえて演出してくる
「24時間以内に対応しないとサービスが停止します」といった“焦らせる内容”や、「夜間・休日に届く」といった“確認しづらいタイミング”でメールが届くこともあります。こうした心理的なトリックにより、落ち着いた判断ができない状態を狙っているのです。
4. 中小企業特有の「メール対応の分散」もリスクに
中小企業では、Web担当・経理・総務・営業などが、日によって異なる人がメールを確認しているというケースも少なくありません。情報共有がうまくいっていないと、「誰が契約更新のメールを見たのか」「このメールは対応済みか」が分からなくなり、騙されるリスクがさらに高まります。
「契約更新」や「容量オーバー」のような“業務っぽい話”だからこそ、疑わずに信じてしまいやすい。だからこそ、事前にこうした傾向を知り、社内で共有しておくことが大切です。
迷惑メールを見極める5つのポイント
日々届く大量のメールの中から、危険な迷惑メールを見極めるには「いくつかの共通点」に気づく力が必要です。以下の5つのポイントを確認することで、不審なメールを高確率で見抜けるようになります。
1. 表示名や送信元アドレスが正規のものか
送信元の名前が「お名前.com」や「Xserver」などと書かれていても、実際のメールアドレスが本物と異なることがあります。必ず「アドレス全体」を確認しましょう。@以降のドメイン部分が似て非なるもの(例:onamae.co.jp → onamae.co.xyz)であることも。
2. 差出人の署名・社名・連絡先が不自然でないか
正規の会社からのメールであれば、会社名・電話番号・URL・所在地などが明記されています。これらが省略されていたり、不自然な英語表記だけの場合は注意が必要です。
3. リンクURLが本当に正規サイトのものか
メール内のボタンやリンクにカーソルをあてると、実際のリンク先URLが画面左下などに表示されます。正規のURL(例:https://www.onamae.com/)と一致しているかを必ず確認しましょう。似たドメインやサブドメインを使った偽サイトもあるため要注意です。
4. 焦らせる文言や危機感をあおる表現が多用されていないか
「24時間以内にご対応ください」「このままだとサービスが停止します」など、急がせる表現が多い場合は冷静に。“今すぐ対応しなきゃ”と思わせるメールほど怪しいという意識を持ちましょう。
5. 添付ファイルがないか(あっても開かない)
最近の迷惑メールでは、ウイルス感染や情報漏えいを目的とした添付ファイルが含まれていることもあります。知らない送信者・不審なメールに添付ファイルがついている場合、絶対に開かないことが基本です。
これらのチェック項目を日常的に意識することで、迷惑メールによるトラブルを事前に防ぐことができます。社内でもこのようなポイントを共有しておくと、より安全です。
実際にあった!開いてしまったらどうなる?
「ついクリックしてしまった」「添付ファイルを開いてしまった」——そんな相談が実際に当社にも寄せられています。ここでは、実際に起こった事例と、そこから学ぶべきポイントをご紹介します。
事例1:偽サイトにカード情報を入力してしまった
ある中小企業の担当者が「ドメイン更新失敗」のメールを受け取り、リンク先の偽サイトでクレジットカード情報を入力してしまったケース。数日後、不正利用により数万円の被害が発生しました。
対応策: すぐにカード会社へ連絡し、カードを停止。警察への相談と、情報セキュリティ会社によるPCのスキャンを実施しました。
事例2:添付ファイルを開いたことでウイルス感染
「メールサーバー容量超過」のお知らせメールに添付されていたZIPファイルを開封。実はマルウェアが仕込まれており、社内ネットワークに拡散してしまったという深刻な被害も起きています。
対応策: 専門業者による隔離措置、PCの初期化、社内システムの全面復旧作業に数日を要しました。
事例3:ログイン情報を盗まれ、メールが乗っ取り被害に
偽の「Webメール認証ページ」にIDとパスワードを入力してしまい、その情報が悪用されて、取引先に迷惑メールを大量送信してしまったケースもあります。
対応策: メールサーバーのパスワード変更、関係各所への謝罪と事情説明、送信制限解除のための手続きが必要になりました。
共通して言えるのは「開いたあとにすぐ行動すれば、被害は最小限に抑えられる可能性がある」ということです。万が一の時は以下をすぐに実行しましょう。
- パスワードをすぐに変更する
- カード会社・銀行に連絡し、利用停止の手続き
- ウイルス対策ソフトでスキャン・駆除を行う
- 周囲に被害が及んでいないか確認する
不安な場合は、迷わず専門の業者に相談することをおすすめします。放置せず、早めの対処が何より重要です。
被害を防ぐために今すぐできる3つの基本対策
迷惑メールやフィッシング詐欺は、日々巧妙さを増しています。しかし、日常的な基本対策を徹底するだけでも、被害の多くは未然に防ぐことができます。ここでは、特別な知識やツールがなくてもすぐに取り組める3つの方法をご紹介します。
1. メールアドレスやパスワードの使い回しをやめる
複数のサービスで同じパスワードを使っていると、どれか1つが漏れただけで、他のサービスまで乗っ取られるリスクがあります。業務用メールアドレスには他では使っていない専用パスワードを設定しましょう。
また、GmailやOutlookなどのメールサービスでは、2段階認証(多要素認証)を有効にすることで、セキュリティがさらに高まります。
2. メールの送信元とリンク先URLを必ずチェック
迷惑メールの多くは、本物そっくりのロゴや文章で信用させようとしますが、送信元のアドレスやリンク先URLをよく見ると、一文字違いや不自然なドメインが使われていることが多くあります。
リンクをクリックする前に、マウスを重ねてURLを確認する習慣をつけるだけで、被害を回避できるケースも少なくありません。
3. 怪しいメールは「開かない・返信しない・添付を触らない」
たとえ取引先を装っていたとしても、少しでも違和感を感じたら即削除が基本です。「返信して確認を取ろう」と思っても、返信先が偽物の場合は相手に情報を渡すだけになってしまいます。
特にZIPファイルやWord、Excel形式のファイルが添付されている場合、マクロウイルスが仕込まれている可能性もあるため、不用意に開かないことが何よりの防御策です。
これらの基本的なポイントを日頃から意識することで、迷惑メールによるトラブルの大半は防げます。企業としては、従業員全体への共有・周知も重要な対策の一つです。
アトラボでも、こうした被害報告が増えています
アトラボでは、ホームページやメールの管理を任せていただいている企業様から、「これって本当にサーバー会社からのメールですか?」といったご相談を受ける機会がここ最近、急激に増えています。
特に多いのは、以下のようなケースです。
- 「サーバー契約の支払いが未完了です。至急ご対応ください」というメールが届いたが、宛先が微妙に違う(契約していないサーバー会社の名前が書かれている)
- 「メールボックスが上限に達しました」という通知風のメールに、ログイン画面へのリンクが記載されていた
- ドメイン失効に関する警告メールが届き、慌てて開いたが、実際には有効期限が1年以上先だった
共通して言えるのは、企業の代表メールやinfo@~のような問い合わせ用メールアドレスが狙われているという点です。会社の顔ともいえるアドレスだからこそ、少しでも“それらしい”文面で送られてくると信じてしまうリスクがあるのです。
中には、取引先や顧客に間違って返信してしまったり、添付ファイルを開いてしまい社内でウイルススキャン騒ぎになったという声もありました。
こうしたトラブルは、「ITの知識がないから起きた」のではありません。多くの場合は、業務で忙しい中、うっかり信じてしまう心理を突かれているのです。
アトラボでは、ホームページやメールの運用に不安があるお客様に対して、メール設定や迷惑メール対策も含めたサポートを行っています。定期的なセキュリティ確認や、お客様のITリテラシーに合わせたアドバイスも可能ですので、お気軽にご相談ください。
メールトラブルは「IT担当でない人」が巻き込まれやすい
迷惑メールによるトラブルが発生したとき、その中心にいるのは必ずしも「システム担当者」や「エンジニア」ではありません。むしろ巻き込まれやすいのは、総務・経理・営業アシスタント・広報など、日常的にメールを多く扱っている“非エンジニア”のスタッフです。
例えば以下のようなケース、思い当たる方も多いのではないでしょうか?
- 普段からホームページ宛の問い合わせメールをチェックしているのは総務の担当者
- 代表アドレス(info@~など)に届く請求書や見積書の確認をしているのは経理の方
- 採用や広報に関するメールを広報・人事が直接受け取っている
このように、日々の業務のなかで「メールを見る・返信する」が習慣になっている部署の方ほど、迷惑メールの“最初の接点”になりやすいのです。
しかも問題なのは、「怪しいメールかどうかを判断するのが不安。でも、上司や社長に聞くのも申し訳ない…」といった心理から、ついクリックしてしまったり、自己判断で開封してしまうことがある点です。
こうした状況を防ぐには、技術的な対策だけでなく、組織全体での「注意喚起」と「判断基準の共有」が重要です。月1回の簡単な社内アナウンスや、疑問があれば気軽に共有できるチャットの設置など、“心理的なハードル”を下げることが、迷惑メール対策としても有効です。
アトラボでも、メールやWeb運用を任せていただいているクライアント様に対し、こうした「人的なミスを防ぐための社内ルール作り」も一緒にサポートしています。


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