
「このファイル、どこにありますか?」「それ、◯◯さんしかわからないんですよね…」
そんな会話が日常的に聞こえてくる職場は要注意。業務が属人化している状態かもしれません。
中小企業において、特定の社員に業務が集中したり、個人の頭の中やパソコン内に情報が眠っていたりするのは珍しくない光景です。
一方で、情報自体は「どこか」にはある。引き継ぎ資料もあるし、メールを探せば経緯も残っている。
それなのに「スムーズに動けない」「仕事が停滞する」「引き継ぎに時間がかかる」……。
こうした課題の背景にあるのが、“見えない業務”=属人化した情報や作業の存在です。
この記事では、なぜ中小企業に属人化が起きやすいのかをひもときながら、その解決策としての「業務の見える化」について解説していきます。
属人化は放置しておくと、社員の離職や業務トラブル、成長の足かせにもなりかねません。
「うちの会社、ちょっと心当たりあるかも…」と思った方こそ、ぜひ最後までご覧ください。
なぜ中小企業は「属人化」に陥りやすいのか?
属人化とは、業務の進め方や判断基準、必要な情報が「特定の人」に依存してしまっている状態のこと。
実はこれ、中小企業では「あるある」の状態でもあります。なぜ、属人化が起きやすいのでしょうか?
理由のひとつは、人数が限られているから。
たとえば、5〜10人規模の会社であれば、経理・総務・受発注・顧客対応など、ひとりが複数の役割を兼ねるのは当たり前。
最初は「◯◯さんが詳しいからお願いしよう」で始まった仕事が、いつの間にか「その人しかできない」仕事になっていくことは珍しくありません。
また、「マニュアル化」や「情報共有」に割く余力が少ないのも要因のひとつです。
日々の業務に追われる中、誰かが新しい仕組みを整えたり、見直したりする時間がない。
加えて、創業時からの慣習や経験則がベースになっている業務も多く、形式的なドキュメントに落としにくいことも背景にあります。
結果として、「聞かないとわからない」業務が増え、業務のブラックボックス化が進んでしまうのです。
「この人がいないと何も進まない」「退職されたらどうしよう」といった声が社内で聞こえるようなら、それは属人化のサイン。
次の章では、この問題を解消する第一歩としての「業務の見える化」の考え方を紹介します。
“見える化”って具体的に何をするの?
「見える化」と聞くと、ITツールの導入やダッシュボード、ワークフローシステムのような「仕組み」ばかりを想像してしまいがちです。
もちろん、それらも有効ですが、最初の一歩はもっとシンプルでOKです。
まずやるべきは、「誰が・何を・どんな手順でやっているか」を書き出すこと。
たとえば、以下のようなステップで進めていくと、ぐっと整理しやすくなります。
- 1. 担当者と業務の棚卸し
社員・スタッフごとに日常業務を洗い出し、「1週間でやっていること」をすべて書き出してみましょう。意外と自分でも把握していなかった「いつの間にか引き継いだ業務」や「突発対応」などが見えてきます。 - 2. 手順と判断の分岐点を可視化
次に、各業務について「どんな順番で進めているか」「この場合はどう判断しているか」といった分岐やルールを整理してみましょう。図やフローにすると、他の人にも共有しやすくなります。 - 3. 情報の所在・使っているツールを確認
使用しているファイル、帳票、アプリケーションなども合わせて記録。「誰のパソコンにしか入っていないエクセル」「共有フォルダにない請求書テンプレート」など、属人化の温床を特定するヒントになります。
このような作業を通じて、「業務の全体像」や「ブラックボックスになっていた手順」が少しずつ明らかになっていきます。
書き出すことで初めて気づけることは本当に多く、システム導入の前にやっておくべき重要なプロセスです。
業務の“見える化”ステップ|まずはここから
いきなり会社全体の業務を「見える化」しようとすると、作業の量に圧倒されてしまいます。
そのため、最初は「1人の社員」「1つの業務」など、小さな単位から始めるのが現実的で、結果的に効果も出やすくなります。
1. まずは「よく止まる仕事」「属人化している仕事」から
「○○さんがいないと進まない」「急ぎの仕事なのに確認ができない」──そんなシーンに心当たりはありませんか?
日々の業務の中で「引っかかる」瞬間がある業務は、まさに“見える化”すべき優先候補です。
例えば、以下のような業務がよく挙げられます。
- 見積書や請求書の発行(どこに何を書けばいいのか不明)
- 入金確認や請求管理(チェック方法が個人任せ)
- 問い合わせ対応(誰が何を返信したかの履歴がない)
2. 手書きでもOK!業務を「フロー図」にしてみる
「業務フロー」と聞くと、難しいツールが必要に思えますが、最初は紙とペン、ホワイトボードで十分です。
「この業務は誰がいつ着手して、どのタイミングで次の人に渡すか?」といった流れを、簡単な図にしていくだけで、ボトルネックや抜け漏れが一気に見えてきます。
3. 「誰でも読める形」にして保存
見える化のゴールは「共有・引き継ぎができること」です。
手書きメモや口頭説明で終わらせず、Googleドライブなどの共有フォルダにデータ化して保存するようにしましょう。図に加えて、「判断基準」や「注意点」などもテキストで残しておくと、あとから見た人にも伝わりやすくなります。
属人化を解消するには、いきなり大がかりなシステムを入れるよりも、まずは現場の実態を言語化・図解することがカギ。
その第一歩として、このような“見える化”のステップを踏んでみてください。
見える化を支えるITツール|中小企業でも無理なく使える
業務の“見える化”を進めるうえで、ITツールはとても心強い味方です。
ただし、「高額なシステム」や「専門知識が必要なツール」ばかりでは、導入も定着も難しくなってしまいます。
ここでは、中小企業でも無理なく使える、実用的なツールをいくつかご紹介します。
1. Googleスプレッドシート|“今の業務”を整理するだけならこれで十分
複数人でリアルタイムに編集できるスプレッドシートは、フロー図の作成や進捗管理の共有にも役立ちます。
テンプレートを活用すれば、簡単な業務一覧やタスク管理表もすぐに作成可能です。
2. Backlog・Notion・Kibela|情報を「見える」場所に集約
「誰が何をやっているのか分からない」「あの資料、どこにあったっけ?」という問題を解消するには、業務情報を一元化するツールが効果的です。
プロジェクト管理ができる Backlog、ドキュメント管理ができる Notion、社内Wiki的に使える Kibela など、チームの性質に合わせて選べます。
3. Chatwork・Slack|会話の流れも記録として残せる
メールや電話では残しづらい、ちょっとした業務の判断や共有をスムーズに残せるのがチャットツール。
社内でよく使われている Chatwork や Slack は、見える化された業務フローと組み合わせることで、進行中の仕事の状況を「リアルタイム」に把握できます。
4. freee・Money Forwardなどの業務特化ツール
経理・請求・勤怠・労務などの業務は、クラウド型の業務特化サービスを使うと、記録や引き継ぎがしやすくなります。
特にfreeeやMoney Forwardなどは、月額数千円から利用可能で、業務内容の“見える化”と“自動化”を同時に進められる点が魅力です。
こうしたツールは「全部導入」する必要はなく、まずは1つからでも十分です。
「この業務はツールで補えるかも」という視点で、少しずつ取り入れてみてはいかがでしょうか。
情報共有を成功させるための社内の工夫
ITツールを導入したからといって、すぐに情報共有がスムーズに進むわけではありません。情報を「共有する文化」や「仕組みづくり」が整っていなければ、結局使われずに形骸化してしまうことも。
ここでは、ツールとセットで取り組みたい社内の“仕組み”と“意識づくり”についてご紹介します。
1. 「報連相」のデジタル版を社内で共通ルールに
紙や口頭で行われていた報告・連絡・相談を、チャットツールや共有ファイルに置き換えるだけでも大きな変化が生まれます。
「この内容はSlackのこのチャンネルへ」「毎週の業務報告はGoogleドキュメントで共有」など、明確なルールを決めておくことが重要です。
2. 「書かないと残らない」を全員で意識する
情報共有は「担当者だけの努力」ではなく、会社全体で意識を変えていく取り組みです。
口頭で済ませず「記録に残す」ことの大切さを定期的に伝えることで、情報共有の精度も高まり、属人化の解消につながります。
3. “書きやすい・見やすい”テンプレートを用意する
どんなに便利なツールでも、使いにくければ定着しません。
「報告書」「業務手順」「チェックリスト」など、誰でも使えるフォーマットを最初に用意しておくと、導入のハードルが一気に下がります。
4. 情報共有を「業務の一部」として組み込む
共有作業を“プラスアルファの仕事”としてではなく、「この仕事を終えたら、共有までがワンセット」と捉えるような社内の流れを作ることが重要です。
たとえば「作業完了報告をSlackに投稿してから退勤」といったように、自然な業務フローに落とし込むことで継続しやすくなります。
情報共有を成功させるには、ツール・ルール・文化の三位一体の取り組みが欠かせません。
「見える化」は仕組みだけでなく、関わる人の意識づけから始まるのです。
アトラボでは、見える化とセットで“情報設計”をサポート
業務の「見える化」を進めるうえで、多くの企業がつまずきやすいのが、情報をどう整理し、どう伝えるかという“情報設計”の部分です。
アトラボでは、ホームページ制作やWebツール導入の枠を超え、社内ナレッジや業務フローを可視化・共有しやすくする仕組みづくりもサポートしています。
「見る人にとってわかりやすい」構成に
たとえば、属人化しやすい業務手順や接客マニュアルなども、「誰が・どのタイミングで・何を見ればいいか」が明確でなければ意味がありません。
単にドキュメントを並べるだけでなく、“使いやすさ”を意識した構成・デザイン設計を行うことで、現場での活用度が大きく変わります。
ナレッジ共有に役立つ“社内限定サイト”の事例も
実際にアトラボでは、理念や研修資料、マニュアル動画などをまとめたパスワード付きの社内専用サイトを構築した事例もあります。
建設業のお客様では、施工フローをYouTubeにアップし、限定公開の動画をまとめたページを新人教育に活用されていました。
このように、「社内の情報資産」を“整理・構築・見せ方設計”までトータルで支援するのが、アトラボの強みです。
「完璧を目指さない」導入からでもOK
最初から完璧なナレッジポータルを目指す必要はありません。
「まずは今ある資料を見やすく整理したい」「この業務だけでも共有したい」といった段階的なご相談にも柔軟に対応可能です。
属人化をなくし、業務の質とスピードを上げるために、情報設計という視点からのサポートを、ぜひご活用ください。

まとめ|“属人化の解消”は、企業成長の土台になる
中小企業の現場では、「その人にしかできない仕事」が多くなりがちです。しかし、それは裏を返せば「その人がいないと仕事が止まる」リスクを抱えているということ。
属人化の解消=企業としての強さの底上げにつながります。
すべてをシステム化・マニュアル化することは難しくても、“今ある情報”を整理し、“誰でも見てわかる状態”にするだけでも、チームの動きは大きく変わります。
その第一歩が、「見える化」なのです。
アトラボでは、業務改善や情報共有をサポートする“情報設計”のご相談も承っています。
「情報はあるのに伝わらない」「仕組みがないから属人化が進む」と感じている企業さまは、ぜひ一度ご相談ください。




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