採用サイトや求人広告を作る際、企業側からよく出てくる言葉があります。それは「若くてやる気のある人が欲しい」というもの。もちろん、それ自体は間違っていません。けれど、それだけでは応募者に響かず、伝わるものも伝わりません。
なぜなら、「若くてやる気がある人」なんて、どの会社も求めているからです。求職者から見れば、あまりにも漠然としていて、「自分のことだ」と思えるポイントがないまま、スルーされてしまう可能性が高くなります。
そこで重要なのが、「求める人物像」の言語化です。これは単なる理想論ではなく、採用戦略の精度を高め、結果としてミスマッチのない採用を実現するための第一歩。この記事では、「求める人物像」を具体的に描くことのメリットや、実際にどう表現すればよいかなどを、人事担当者の目線で丁寧に解説していきます。
1. 「求める人物像」が曖昧だと何が問題か?
採用活動において「求める人物像が曖昧」という状態は、さまざまな場面でミスマッチを引き起こす原因となります。これは応募者にとっても企業側にとっても不幸な結果を招きかねません。
掲載する求人原稿が“誰に向けたものか”分からなくなる
原稿の中で、どのような表現をすれば響くのか、どんなエピソードを入れると刺さるのか、それは「誰に向けて発信するか」が明確になっているからこそ考えられることです。求める人物像がぼんやりしていると、結局「当たり障りのない内容」に落ち着き、誰にも響かない求人広告になってしまいます。
社内で“どんな人がほしいか”の認識がズレる
経営者、人事担当者、現場のリーダー、それぞれの立場で「良い人材像」が異なるのは当然です。それをすり合わせて言語化するプロセスを省いてしまうと、面接の評価基準がバラバラになったり、選考に一貫性がなくなったりします。これでは本当に欲しい人を逃してしまう恐れがあります。
入社後のミスマッチを招く
採用の場では企業側も応募者側も「よく見せたい」と思うもの。しかし、入社してから「思っていた人と違う」「思っていた会社と違う」というすれ違いは、双方にとって大きなストレスです。求める人物像を明確にしておくことで、応募者側も「自分に合いそうかどうか」を判断しやすくなります。
このように、「求める人物像」が曖昧なままでは、採用活動のスタート地点から方向を誤ることになりかねません。次の章では、その人物像を明確にするメリットについて解説していきます。
2. 言語化のメリット:3つのプラス効果
「求める人物像」を言語化することは、単に社内の共通認識を持つためだけではありません。採用活動全体の精度と成果を高めるための、非常に重要なプロセスです。ここでは、言語化によって得られる3つの主なメリットをご紹介します。
メリット①:求人広告の表現が具体的になり、刺さりやすくなる
たとえば「協調性がある人」という言葉も、「初対面の人とも臆せず話せる」「社内のイベントに積極的に関わる」などと具体的に表現することで、応募者に明確なイメージを与えることができます。結果として、自分に合うと感じた応募者が集まりやすくなり、応募の質が高まります。
メリット②:面接の判断基準が明確になる
言語化された人物像は、そのまま選考基準の「ものさし」として活用できます。「リーダーシップがある人」とは何を指すのか、それをどんな質問で見極めるのか。面接官ごとの判断のブレを抑え、一貫性のある選考が可能になります。
メリット③:入社後の定着率が上がる
「求める人物像」に共感して応募し、面接でもその要素が確認できた人材であれば、企業との価値観のズレが少なく、早期離職のリスクも低くなります。言語化によってミスマッチを減らすことは、長期的に見ても採用コスト削減につながります。
このように、求める人物像の言語化は、採用活動のスタートだけでなく、選考、定着までをスムーズに導くための“軸”となる存在です。次の章では、実際にどのように言語化を進めていけばよいか、そのポイントをご紹介します。
3. “求める人物像”の具体的な作り方
「若くてやる気のある人」では、誰にも響かない——それはわかっていても、どうやって“求める人物像”を明確にすればよいか悩む方も多いでしょう。ここでは、実際に社内で話し合いながら進めやすい、3つのステップをご紹介します。
ステップ①:過去の“活躍社員”を振り返る
まずは、これまでに入社し、活躍している社員の共通点を洗い出してみましょう。性格、価値観、行動パターン、入社時のスキルセット、学歴・経歴などから、「うちに合う人材」のリアルな像が見えてきます。逆に、早期離職してしまった人との違いにも注目すると効果的です。
ステップ②:業務内容・職種に必要な資質を言語化する
次に、その職種における業務内容や現場での課題を明確にし、それに必要な能力やマインドを具体的に言語化していきます。たとえば「コミュニケーション力が必要」と言うだけでなく、「クレーム対応で冷静に話を聞ける」「報連相を欠かさない」など、行動レベルで表現するのがポイントです。
ステップ③:社風や価値観に合う“人柄”を考える
スキルや経験だけでなく、会社の雰囲気や大事にしている価値観にフィットする人材を採ることも重要です。「成果よりプロセス重視の文化」「上下関係がフラットな職場」「お客様と長く付き合う商売」など、自社ならではの特徴を踏まえて、求める人柄を補足しましょう。
このように、実在の社員や職場環境をもとに「言葉にしていく」ことで、誰が見ても共通認識を持てる“求める人物像”が明確になります。次の章では、それをどのように採用サイトや求人原稿に反映させるかについてご紹介します。
4. 採用サイトや求人広告にどう表現するか?
せっかく社内で明確にした“求める人物像”も、採用サイトや求人広告でうまく伝わらなければ意味がありません。応募者に「自分のことかも」と思ってもらうためには、言葉の選び方と見せ方に工夫が必要です。
「求める人物像」は項目で見せる
採用サイトでは、単なる文章ではなく、箇条書きやチェックリスト形式で見せることで、視認性が高まり、読み飛ばされにくくなります。たとえば:
- 相手の話をしっかり聞ける方
- チームで協力して物事を進めるのが好きな方
- 変化を楽しめる柔軟性のある方
このように「自分は当てはまる」と思わせるフレーズを並べることで、応募者の共感を誘い、行動につながりやすくなります。
社員インタビューや1日のスケジュールで補足
文章だけでは伝わりにくい人物像は、社員インタビューや職場紹介のコーナーで自然に表現することもできます。たとえば、現場で働く先輩の声として「最初は緊張したけど、周りのサポートがあったので安心できました」など、人物像に合致するエピソードを交えると説得力が増します。
求人広告では「共感のフック」を入れる
求人ポータルなどの広告では文字数制限もありますが、冒頭に「こんな方に向いています」といった一文を入れることで、ターゲットを明確にできます。
例:「人の役に立つことが好きな方にピッタリ!」「安定した職場で長く働きたい方、大歓迎です」など。
求職者は日々、無数の求人情報に触れています。“自分ゴト”として捉えてもらうためには、具体的かつ共感しやすい言葉で“人物像”を表現することが重要なのです。
5. やってはいけない「ふわっと人物像」3つの例
「求める人物像」は、企業にとっての理想の応募者像を伝える大切な要素ですが、曖昧すぎる表現や抽象的な言葉ばかりでは、応募者にとってピンとこず、かえって「自分には向いていないかも」と感じさせてしまう危険があります。ここでは、よくある「ふわっとした人物像」のNG例とその改善ポイントをご紹介します。
例1:「明るく元気な人」
一見ポジティブな印象ですが、「明るさ」や「元気さ」の定義は人それぞれで曖昧です。
改善例:「お客様との会話を楽しめる方」「人と接することが苦にならない方」など、具体的な行動や状況に言い換えましょう。
例2:「やる気のある人」
やる気は重要ですが、誰でも言えるフレーズでは意味がありません。何に対して、どのような形でやる気を持つのかが不明瞭です。
改善例:「新しいことを学びながら成長したい方」「目標に向かって継続的に努力できる方」など、やる気の“方向性”を明確にしましょう。
例3:「協調性がある人」
よくあるキーワードですが、何をもって「協調性がある」とするのかが曖昧です。
改善例:「チームでの仕事を大切にできる方」「周囲とのコミュニケーションを円滑に取れる方」など、具体的な関わり方を示すと伝わりやすくなります。
求職者にとって、抽象的な表現は自分ごと化しにくく、心に刺さりません。誰が読んでも「自分のことかも」と感じられるような、“行動ベース”での表現を心がけましょう。
アトラボができること:採用戦略に基づいたコンテンツ設計支援
株式会社アトラボでは、単なる「採用サイト制作」ではなく、採用戦略に基づいた設計・ライティング支援を行っています。とくに中小企業では、限られたリソースのなかで最大限の効果を発揮するために、「誰に、何を、どう伝えるか」の設計が欠かせません。
“求める人物像”の言語化から伴走
「若くてやる気がある人」ではない、御社らしい“らしさ”を持った人物像を明確にするために、経営層や現場社員へのヒアリングを通じて、リアルな魅力やカルチャーを掘り起こします。
その上で、採用ターゲットに刺さる言葉や表現を共に考え、求人広告や採用サイトに反映させます。
採用サイト・求人原稿の一貫した設計
求人ポータル、オウンドメディア、採用LPなど、媒体ごとの特性を踏まえて、ブレのないトーン・メッセージ設計を行います。また、必要に応じて写真撮影やインタビューも実施し、「誰が見ても等身大の会社像」が伝わるようサポートします。
「採用のためのコンテンツ」を一緒に育てる
制作して終わりではありません。アクセス解析やエントリー状況の振り返りを通じて、継続的な改善提案も可能です。
時代や応募者ニーズに合わせて変化していく“求める人物像”に合わせて、コンテンツも育てていきましょう。
採用に本気の企業に、本気で伴走できるのがアトラボです。
ぜひ、採用におけるWeb活用のご相談は私たちにお任せください。
まとめ:「求める人物像」の言語化が、採用成功の第一歩
「若くてやる気のある人」──それだけでは、今の求職者には響きません。採用活動は“選ばれる活動”でもあるという視点を持つことが、今の時代における採用成功のカギです。
そのためには、まず自社のカルチャーや価値観を整理し、「どんな人と働きたいか」「どんな人が活躍しているのか」を言葉で明確にすることが欠かせません。これは、求人広告や採用サイトだけでなく、面接や入社後のミスマッチ防止にもつながる、非常に重要な取り組みです。
アトラボでは、こうした採用戦略の設計からコンテンツ制作まで、中小企業の人事担当者に寄り添ったサポートを行っています。「誰を採りたいか」がはっきりすれば、打ち出すべき情報や言葉も自然と定まっていきます。
採用がうまくいかない…とお悩みなら、まずは“求める人物像”の言語化から始めてみませんか?
ご相談はいつでもお気軽に、アトラボまでどうぞ。


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